青少年のためにオススメする「 哀しみのベラドンナ 」

“保健”の教科書を愛読していた真面目な男子諸君にこの作品を贈る!この記事で紹介する「 哀しみのベラドンナ 」というアニメ映画は、非常に美しく繊細であり、かつ学びの多い大傑作のアートムービーだ!

時は遡り1973年、手塚治虫が立ち上げたプロダクションとして有名な虫プロが“大人ためのアニメーション”の3作目として山本暎一監督が作り上げたアニメ映画が「哀しみのベラドンナ」である。もう一度言う『大人たちのために』作り上げた映画なのだ。

結婚したばかりの美しい女性「ジャンヌ」が乱暴されるところからすべてが始まる

舞台は中世のフランス。主人公は結婚したばかりのジャンヌという若い女性。旦那のジャン(ジャンヌと名前は似ているが誤記ではない)は農夫であり領主に貢物を用意できず、結婚式早々ジャンヌは乱暴されてしまう。この『乱暴される』という表現は、察してくれ。

そんな悲劇に苛まれたジャンヌのもとに、ある日悪魔が現れジャンヌに力を与えることから物語は大きく動いていく。そして最後にはとんでもない結末に向かっていく、そんな話だ。

ジャンヌの息遣いまでもが伝わってくる「幻想的」な演出

この映画、ぬるぬる動かすアニメーションとはまったく逆のアプローチなのが印象的である。パン(カメラの視点を横移動させること)などを駆使して、水彩で綺麗に描かれた静止画をじっくり舐め回すように見せてくれる。その一方でただの紙芝居映像にならないよう、随所で動きのある演出が駆使されている。シーンによっては不思議で言葉にするのが難しい印象的なアニメーションシーンがあったりする。それは是非諸君の目で確かめて欲しい。なんというか、なにかがピクピクしているとかパクパクしているとかそんな感じだ。

また主人公のジャンヌの美しさの描き方にも注目だ。大人の女性の魅力が十分に伝わるよう全編に渡ってジャンヌが生き生きと描かれている。ジャンヌがどう感じているのか、見ているこちらまで伝わってくる様だ。「あぁ、気持ちよさそうだなぁ」とか、そんな感じだ。是非諸君にも、彼女の息吹を感じてもらいたい。

↑北米版公式PVから引用しました。

2016年の春に4K版として全米各地の映画館で上映された「 哀しみのベラドンナ 」

しかもこの映画、古い映画と切り捨てるのには惜しい理由がある。今年2016年の春に4K版にレストア(きれいな状態に修復)をして全米(!)各地の映画館で上映された作品でもあるのだ。

まさにある意味旬の作品でもある。極めつけは、日本でもリリースされていないブルーレイ版まで、今年北米で発売を果たしているというのだからすごい。邦画なのにだ!ずるい!世界的にも再評価の波が来ている今こそ、まさに「哀しみのベラドンナ」の第二の旬とも言えるのだ。

幸運なことに11月3日から11月6日にかけて新千歳空港にて開催される「第三回新千歳空港国際アニメーション映画祭」でも本作のイベント上映が決定している。是非この機会に、偉大なる日本アニメーションの歴史の一ページを味わって欲しい。

どうだろうか。健全な青少年である諸君にも「哀しみのベラドンナ」の素晴らしさが少しでも伝わっただろうか。最後に忠告しておきたいのは、くれぐれもこの映画をお父さんお母さんと一緒に見ないことだ。

気まずくなること間違いなし。万が一、雰囲気を悪くしても一切責任を負えないので、十分に注意して欲しい。

文;ネジムラ

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