ガンダム原作者『 富野由悠季 』が持つ脅威の編集力

「俺は映画を作りたいんだ!」これが、ガンダムの原作者富野由悠季が一貫して口にしてきた事である。

その思いが結実した作品が、やはり「機動戦士ガンダム」ではあるのだが、その中でも「劇場版のファーストガンダム三部作」ではないかと私は思っている。

これらの作品はもともとテレビシリーズのものであったものである。いわんや、ファーストガンダムは本来43話、計1290分の時間である。それを、劇場版三部作で412分に富野由悠季は収めているのだ。

テレビシリーズの総集編は数多い。同じガンダムでもSEEDシリーズなどスペシャルエディションなどもある。

しかし、富野由悠季氏はこれを一つの映画として上手に仕上げているのだ。

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TVシリーズを映画するには問題もあった

このような編集をした場合、本来、二つの問題が出てくるように思える。

1つ目は「見ている者がだらけてくる」という問題である。観客が映像やストーリー展開に疲れてくる場合がある。

そもそも、映画作品の場合は、元々映画の長さが分かっているものだが、TVアニメを映画化するにあたっては、ストーリの前後に起伏を持たせなければ、観客はメインストーリーを知っているだけにすぐに飽きてしまう。

2つ目にどのエピソードを選択するかという問題である。劇場版の上映時間の都合上、当然、カットするエピソードや人物も出てくる。

例えば、第15話「ククルス・ドアンの島」などは、初めから終わりまで辻褄が合い、更には観客の目を離させない演出をやり切っている。

ファーストガンダム劇場版三部作は、ガンダムブームの中ということもあって、記録的な大ヒットとなりガンダムシリーズの流れを確立した作品となった。

20年前の映像と新作カットを繋ぎ合わせるという荒業

2004年から公開された劇場版Ζガンダム三部作は新訳として新たな解釈と共に、制作費の都合上、20年前の映像と新作カットを繋ぎ合わせるという挑戦を行った。

Ζガンダムはファーストよりも話数の多い50話計1500分であり、それを292分一作平均100分に仕上げている。更には、エゥーゴ、ティターンズと共にハマーン率いるアクシズと三つ巴の構造であり複雑な陣営となっている。それらを先ほど述べた上映時間以内にまとめるというのは並大抵の演出力ではない。

更には賛否両論はあるものの、カミーユをラストで精神崩壊させないところなど、テレビシリーズとは異なる展開のストーリーを構築している。

新旧のカットを使っての作業も斬新だった。「まるでタイムスリップ」と語っていたが、いくらデジタル修正してるとは言え、20年前のカットと新作カットでは違和感を感じざるを得ない。実際問題、制作側の富野由悠季氏もやはりそうであったようだ。

その違和感を理解した上で、富野由悠季氏はテレビシリーズを全話見直すと共に、絵コンテ上に置いて20年前のコンテと新作カットのコンテを繋ぎ合わせ、膨大な時間をかけて納得のいく映像を作り上げている。

富野由悠季氏が持つ編集力、バイタリティ、精神力、そしてこれらを支える想像力の凄まじさが、Ζガンダム劇場版では感じとれる。

富野由悠季氏が持つ編集力、バイタリティ、精神力は一体どこから?

では、富野由悠季氏が持つ編集力、バイタリティ、精神力は一体どこからくるのだろうか?その淵源を辿れば富野由悠季氏が初めて関わった作品「鉄腕アトム」にあるのではないだろうか?

当時、日本大学で映画を学んでいた富野由悠季氏は、就職した虫プロにはアニメや漫画に関わる仕事をする多くの人間がいた。そんなライバルとも言える多くの同僚を見て富野由悠季氏、

「彼らに勝つには絵では勝負にはならない。絵コンテで勝とう!」

と決意したという。

そこから、富野由悠季氏は絵コンテの道を極めるのです。コンテ用紙を肌身離さず、自身の結婚式でも持ち込んだほどである。いつしか誰彼なく「コンテ千本切りのトミノ」との呼ばれるようになり、実際に絵コンテを担当させれば富野由悠季氏の右に出るものはいなくなる。

リミデットアニメを確立した手塚先生の元で編集を担当

当時、リミデットアニメを確立した手塚氏の元で大量のフィルムから絵を抜き取り一本の話を仕上げるという編集を行っていたのも富野由悠季氏だ。このあたりが、Ζガンダム劇場版で20年前のカットと新作カットを繋げるという発想が生まれてくるのかもしれない。

富野由悠季氏の実力は日本のアニメーションに携わるものであればその実力を知らないものはおらず、虫プロ退職後も様々なジャンルの絵コンテを切るに至る。

そして、富野由悠季氏のその熱い編集力、バイタリティ、精神力などは、庵野秀明氏の「新訳エヴァンゲリオン」や、その他大勢の様々なクリエイターたちに影響を与え続けているのである。

 

常にアニメーションの世界に先駆を切り、革命を起こし続けてきたのは、富野由悠季氏なのだと気付かされるのではないだろうか。

それは、富野由悠季氏の若き日の苦労と忍耐、そして「映画を作りたい」との信念の結晶であり、その努力の過程で生まれた「機動戦士ガンダム」、そしてその後に続くクリエイター達が生み出す様々な作品が、私たちに大きな夢と希望を与えてくれているだと、私は思う。

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