先日、声優の水谷優子さんがお亡くなりになりました。そんな水谷さんの代表作の一つ『 赤い光弾 ジリオン 』を、今回の熱血アニメ列伝では取り上げたいと思います。
水谷さんの出世作となったこの作品が作られたのは、80年代後半の87年。しかし、今見ても、脚本、作画、演出、どれも色あせないほどに素晴らしい作品と言えると思います。
そんな『 赤い光弾 ジリオン 』。特に若い方にはあまり馴染みが無い作品かもしれないので、少し内容を紹介していきましょう。
『 赤い光弾 ジリオン 』のストーリーは、たった3丁の銃だけで戦力差を覆す、まさに熱血なアニメ!
『 赤い光弾ジリオン 』のあらすじは、ざっとこんな感じです。
西暦2387年。宇宙進出を果たした人類は「第二の地球」と呼ばれる「惑星マルス」を植民地として開拓していました。そんな地球人類に危機が訪れます。それは「ノーザ軍」と呼ばれる侵略宇宙人ノーザ星人によるマルス侵攻でした。
ノーザ軍の兵士には、ほぼ地球の通常兵器では歯が立ちません。人類は滅亡をただ待つだけになってしまうのでしょうか……?そんな時に、人類のピンチを救うのは「ジリオン」と呼ばれる三丁の銃でした。
この銃を主力武器として使う、特殊部隊「ホワイトナッツ」のメンバー「JJ」「チャンプ」「アップル」がノーザ軍と激しい死闘を繰り広げます。惑星マルスの命運はいかに?
と、いうのがこの作品の大まかな内容です。
先ほども書きましたが、人類のピンチを救うのは「銃」です。特に最初は見事に携帯型の普通の大きさの銃です。それが三丁しかありません。
ちょっと良く考えると「え?たった三丁の銃で軍隊と戦って勝つ話なの?」とあらすじだけ読むと思う方もいるかもしれませんね。
まあ、実際にはジリオン以外のサポート的兵器の威力や、後々のジリオンのパワーアップなどで、ノーザ軍と戦う様が描かれているのですが。この辺はネタバレになるので、見てもらうしかありません。
しかし、ジリオンの「熱血的魅力」はまさにこの「三丁の銃」で戦力差をひっくり返すことにあります。
前述した通り、通常兵器ではほぼノーザ軍の兵士にはダメージを与える事が出来ない状況で、度々地球軍はピンチを迎えます。そこに、颯爽と「ホワイトナッツ」が登場し、ノーザ軍をジリオンによって蹴散らす姿は実に胸を熱くさせます。
絶対的な不利な状況を、秘密の兵器で覆す。ある意味で、アニメ作品の王道とも言える展開は、十分に見ている人の胸を熱くさせることでしょう。
熱い部分だけが、この作品の魅力ではありません。このコラムを書く為に、久しぶりにジリオンを見返して思った事は、戦闘シーンの演出や、その作画描写のレベルが近年のアニメ作品と決してひけを取ってないことです。
銃で戦うといっても、ただバンバン撃つだけで戦局が変わる訳ではありません。特に主人公のJJ(ちなみに本名ではなく、コードネームです)は、その身体能力の高さを生かし、バック転などを駆使して、かなりアクロバティックに敵と戦います。
そう言った、体を動かして敵と戦う描写が、本当に今のアニメ作品に決してひけを取らないレベルで描かれているのに、正直かなり驚きを覚えました。
「このクオリティで87年に作られていたって、本当に凄いな……」
そんな独り言まで言ってしまったほどです。
声優の 水谷優子 さんへの深い追悼の意を込めて
さて、今回は声優の水谷優子さんの追悼の意味をこめて、このコラムを書いているので、水谷さんが声をあてた「アップル」という女性キャラクターの話を最後にしましょう。
「アップル」。これも勿論コードネームなのですが、彼女の魅力は(あくまで個人的に、ですが)「若干ぽっちゃり」な点にあると思っています。
当時、アニメのヒロインキャラって、超がつくナイスボディか、あるいはスレンダーなスタイル抜群の女性、というキャラクターしかいなかった印象があります。
(例外的に『The かぼちゃワイン』のヒロイン「エルちゃん」という高身長グラマラス美女って設定の娘がいましたが)
しかし、アップルは主人公のJJにその肉付きを指摘されるぐらい、ややぽっちゃりな肉体の持ち主でした。と、言っても決して目だってふくよかと言う訳ではないのですが。
でも、現代のように、色々なスタイルの女性キャラクターが当たり前に描かれている時代ではない、そんな時に、ちょっとだけぽっちゃりな彼女の魅力に釘付けになった青少年は多かったことでしょう。
多分、ぱっと見で彼女が「ややぽっちゃり」と認識する人はあるいは少ないかもしれません。
ですが、当時のアニメーターさん達は何か色々と頑張っていたのでしょうね、物凄く微妙なラインの「ややぽっちゃり」な肉付きが、作品を見ていると何となく認識してしまうのです。
書いていても、ちょっと思ったのですが。87年制作という事を考えると、この微妙なラインの「ややぽっちゃり」を作画で表していたのって、むちゃくちゃ凄い事のように思えてきました……(愕然)。
そんな彼女のキャラクターと、水谷さんの柔らかくて、少しおっとりとした雰囲気の声質が良くあって、アップルの魅力をより引き出していたように思えます。
水谷さんの訃報を受けた時に、このアップルの名前をあげていた人は、各SNSでも多く見かけたので、色々とこのキャラクターに刷り込みをされた男性はあるいは多かったかもしれません。
とにかく、この『赤い光弾ジリオン』は、水谷さんの出世作の一つ。是非、未見の方は一度見てみて欲しい作品です。