『ガッチャマンクラウズ』新時代のヒーロー論

ガッチャマンクラウズ

タツノコプロが制作した往年の名作アニメ『ガッチャマン』。科学忍法を駆使して悪の秘密結社と戦う勧善懲悪のヒーローアニメだ。

そんな『ガッチャマン』の名を冠する作品として2013年に放送されたタツノコプロ50周年記念の新作アニメ『ガッチャマンクラウズ』。

『妖〜AYAKASHI〜』や『C』『つり球』といった多くのノイタミナ作品を手がけてきたクリエイター『中村健治』さんが監督を努めた、まさに今までのガッチャマンを一蹴するような新世紀のヒーロー像を形成したアニメだ。
すでに今夏から第二期にあたる『ガッチャマンクラウズ インサイト』の放送が決定しているこの『 ガッチャマンクラウズ 』ってなんスかね なんなんスかねということで、第二期放送に備え今作をレビューしていきたいと思う。

ガッチャマンクラウズ

最早別物!? 一新されたストーリー

2015年冬アニメとして放送された『夜ノヤッターマン』は、正義の象徴であるところのヤッターマンを人々を掌握する悪として描き、ドロンボー一味をヤッターマンに抗う主人公とする一新された脚本に驚かされたが、『ガッチャマンクラウズ』は最早別物の作品として確立されているほど設定やあらすじは一新されている。

舞台は第二の都市機能を有する2015年の東京都立川市、ほぼすべての人々が『GALAX』と呼ばれる巨大なSNSに依存して生活をしている架空の世界。
ここではかつてのガッチャマンは都市伝説やフィクションのように信じられていた。

天真爛漫な女子高生・一ノ瀬はじめは、突如として現れた謎の老人から『ガッチャマン』に変身できる手帳型のデバイス『NOTE』を貰い受けるところから物語は始まる。
半信半疑だったはじめの目の前に飛び込んで来たのはガッチャマンとして戦う橘清音とGメンバーたちだった。

ヒーローってなんすかね!?

ガッチャマンクラウズで描いているのは、正体不明の巨悪に立ち向かうかつての勧善懲悪としたただのヒーローの物語ではなく真の正義とはなにかを問いかける新時代のヒーロー論。

特に本来、主人公であるはずのはじめがまったく正義のヒーローっぽくないところと逆にガチガチに正義感に囚われている清音との対比がこの物語のキモとなる部分だろう。

例えば、清音は正体不明の生命体『MESS』を敵と断定し排除しようとする。彼の正義感故の行動であり、地球の秩序を守ろうとするヒーローのあるべき姿とも言える。
一方ではじめは、そんな『MESS』に対して悠然と対話でコミュニケートを図り、MESSとわかりあえるまでにいたるのだ。

敵だと思ってた相手は実は兄弟だった!? 魔女だと思って戦ってた相手は実は元魔法少女だった!?なんて、どんでん返しが最終話付近で発覚するベタな作品は多くありますが、2話目にして正体不明の敵とまずは対話を図ろうとする主人公もなかなか前衛的だろう。

このような清音とはじめの行動が対比されるシーンは度々見受けられる。電車で席を譲らない若者に叱責する清音と、その人にも事情があると考えるはじめだったり、通行人とぶつかって謝られなかったときの両者の対応だったり。

型破りでお気楽主義なはじめは、命令や指示に従わずに常に本能のまま行動してはGメンバーたちを困惑させてしまいます。しかし、そんなはじめなりの『正義』の行動が時に、メンバーを危険に晒してしまう場面もある。

前時代的ともとれる清音のシステマチックなヒーロー像と、はじめの現代的なヒーロー像。
決してどちらが正しい行動なのかは決めることも、どちらを否定することも出来ないだろう。

はじめは、独り言のように『ヒーローってなんすかね なんなんすかね』と問う場面があるが、そんな真のヒーローってなんなんすかねと考えさせられるメッセージ性がこめられている作品なのだ。

ネットワーク社会に潜む闇

そして、あらすじにも述べた巨大SNS『GALAX』の存在がこの作品のキーを握ります。

GALAXという SNS は、AI(人工知能)に対して音声入力で情報を引き出すという素人でも扱えるインターフェースに持ち、画面はアメーバピグのようなアバターが仮想空間を歩いて世界中の人とコミュニケーションがとれます。
その利便性故に、世間的な信頼度は公的な機関さえ上回り様々な画面で活用されているというまさに夢のようなツール。しかしユーザーがSNSに依存しきっている世界なので、裏を返せば悪用されるともう手が付けられないところまで加速してしまいます。

それを突いてきたのが、謎の宇宙人『ベルク・カッツェ』。彼はGALAXを悪用して犯罪や混乱を引き起こします。SNSユーザーである不特定多数の群衆は情報に右往左往されてしまうのです。

サマーウォーズ』のように、SNSや電子空間を使用して人々を脅威に陥れ、ユーザーが情報に踊らされるという構図は現代のネットワーク社会の善悪の線引が出来ない世界観やネットワーク社会そのものの虚弱性を象徴していてとても考えさせられます。

そしてGALAXユーザーを総称して『ギャラクター』と呼ばれていますが、ギャラクターはガッチャマンシリーズにおける敵の秘密結社の名前であり、GALAXのAI『総裁X』も敵のボスの名前なのです。
善良な市民であるはずのSNSユーザーが敵の秘密結社の名前で呼ばれるという、ネット社会は善にも悪にもなれる表裏一体のものだという皮肉めいたメッセージが読み取れる気がします。

いかがでしょうか、第二期である『ガッチャマンクラウズ インサイト』も色々な考察をしながら観ると一層楽しめるのではないでしょうか。