夕日をバックに、男と男が泥まみれ・汗まみれになりながら殴り合う――そんなシーン、誰しも一度は見た覚えがあるだろう。
この『 マクロスプラス 』は、そんな男と男の熱血ドラマを、SFロボットアニメという壮大な規模の世界観で表現した作品だ。
あらすじ
2040年、惑星エデンにあるニューエドワース基地では、軍の次期主力可変戦闘機の採用コンペが行われていた。
競合メーカー2社のテストパイロットは、かつて親友同士であった、イサムとガルド。
幼馴染の二人は、とある事件をきっかけに袂を分かっていた。そして二人は偶然にも幼馴染・ミュンと再会。競合するテストパイロットとしても、彼女を巡る三角関係でも、二人は火花を散らすことに……
イサムとガルド
あらすじを読んでお解りのとおり、この作品はイサムとガルドという二人の男の対決が主題となっている。
ただし、ただ素手で殴り合って喧嘩するというわけではない。兵器採用コンペで争う二つの会社のテストパイロットとして、半ば公式な形で対決するのだ。しかも、全長約15mもの可変巨大ロボットに乗って。
圧倒的クオリティの映像・音楽
そんなふうに野郎二人の熱血ドラマが展開されるとあっては、男臭くて昭和っぽい作風なのかしら……というと、実はそんなこともない。
むしろ渡辺信一郎監督による情緒的な絵作りと、天才・菅野よう子が手がける印象的な音楽のおかげで、ハリウッド映画のような雰囲気さえ漂っている。
また、アクションシーンのクオリティも半端ではない。
戦闘機型にも変形できるロボットと、幾多のミサイルが縦横無尽に駆け回る空戦シーンは、「板野サーカス」と呼ばれる作画技法の代表的シーンとして、制作から20年経った今でも絶大な指示を得ている。
特に力の入ったワンシーンは『伝説の5秒』とも言われ、半ば神格化されているほどだ。どのように凄まじいかは、実際にその目で確かめて欲しい。
OVAと劇場版
今作はOVA版と劇場版の2バージョンが用意されている。最初にリリースされたのがOVA版で、その後に劇場版が製作された。
内容は基本的には同一だが、細部の流れが微妙に異なっており、見所となるシーンも違ってくる。
ちなみに、上記の『伝説の5秒』のシーンが収録されているのは、劇場版の『MOVIE EDITION』の方なので間違えないように。
今作は一応『マクロスシリーズ』に属しているものの、これ単作でもキチンと楽しめる作りになっている。
ロボットアニメ好きにはもちろん、男臭いドラマが好きな人にも是非見て欲しい一作だ。