『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』「喪女」のひたむきな努力と悲哀のエッセンス

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!

『 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 』はスクウェア・エニックスのオンラインマガジン『ガンガンONLINE』に連載中の谷川ニコさんのマンガをアニメ化したもので、2013年7月より3か月間放送されました。モテたくてモテたくて仕方がない女の子が、「高校デビュー」を果たすべく努力をするのですが、そのほとんどが空回りをして、奮闘虚しく失敗に終わり、更なる努力をするけれどもそれも失敗して・・・、という中で、少しずつ成長する、かと思ったらまったく成長しないというアニメ的ではない「リアル」な人物像をギャグタッチで描いた作品です。

モテたいけれども何をやっても失敗する主人公「もこっち」

主人公の黒木智子(もこっち)は、異性にモテたくてモテたくて仕方がない女の子。高校生になり、きっと男の子にモテるだろうという根拠のない自信に満ち溢れていましたが、現実は非情で、学校の席は「主人公席」(最後列窓側)にもかかわらず、誰からも声をかけてもらえない。自分もどう話しかけてよいのかわからない。結局いつも一人ぼっち。

そんなもこっちが、いろいろとモテるべく奮闘するのですが、すべて失敗してしまいます。フラグはすべてへし折っていくスタイル。文化祭では目立とうと何かしようとして自分の手を切ってしまう、花火を見に行こうとしても叶わず、自分一人でさびしく花火をすることで満足してしまう。コミュニケーション力を身につけて一発逆転しようと行った先が歌舞伎町・・・。「モテたい」という目的に対してもこっちが取る「手段」が、ことごとくずれているのです。案の定失敗して、他人を恨む。

他人をdisっていくスタイルの自意識過剰キャラ

もこっちはモテたいために努力は惜しまないのですが、基本的に自分の壁を取り払うことはしません。自分の「安全」を確保したうえで、大きなリスクを取りに行くためにことごとく失敗していきます。

基本的に男にモテる女性はすべて「ビッチ」。これは唯一中学時代から会話できていた成瀬優(ゆうちゃん)が「高校デビュー」に成功し、イメチェンし彼氏ができたら、彼女もビッチ呼ばわりです。でも、親友付き合いは続けます(なぜならほかに友達がいないから)。根拠のないプライドと自意識過剰、その裏返しのモテない劣等感がもこっちというキャラを形成しています。『山月記』の「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」そのままです。優ちゃんに対しても、もこっちは、「私のほうが賢い。このバカなビッチめ!」という意識を持っていて、それも行動に出ます。

では、視聴者からもこっちは反感を買うキャラなのでしょうか?

リアルであるがゆえに共感を呼ぶ

実はこの作品、知名度が上がったのは、日本以外の外国の人が、インターネット上の掲示板にもこっちに対する共感を書いて盛り上がったこともきっかけだったのです(原作は無料のオンラインマガジンなので外国からもアクセスできます)。日本に限らず、自分の国でもこういう人はいるし、自分ももこっちみたいな性格だという共感です。

多くのアニメでは、主人公はいい性格をしていたり、最初はダメでもストーリーを通じて成長し、最後は逆転、目的をかなえます。しかし、もこっちは、最初から最後までゲスのままで自己中心的なキャラクターにブレがありません。
現実の世界では、そういう人もいますし、それだからこそ国境を超えて愛されるのだと思います。キャラクターの成長によるカタルシスではなく、リアルな「ダメさ」を愛する、そういう楽しみ方ができる作品です。

夏休みにいとこのきーちゃんが家に来た時のエピソードは秀逸です。尊敬→失望→嫌悪→憐憫→慈愛、と、きーちゃんのもこっちへの感情が変わる有り様はすさまじいです。もこっちは何をしてしまったのでしょうか!?

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リンドウ

元丸の内のサラリーマンです。サラリーマン時代はオタク趣味を隠していましたが、脱サラを機に趣味を全開にしてライター業を行っています。アニメをはじめとしたポップカルチャーと文化、経済の関係に興味があり、在職中は(趣味を隠しながらも)、涼宮ハルヒをテーマに経済セミナーを企画したりもしていました。現在、フリーライターとして活動すべく奮闘中です。