冨樫義博の大ヒットコミック「 HUNTER X HUNTER 」は2度テレビアニメ化されています。1999年版は日本アニメーション制作でフジテレビで放映されました。しかし、アニメに原作が追いついてしまったため、「ヨークシンシティ編」のしかも途中で放映は終わってしまっています。
原作のストーリーがある程度進んだところで、続編として「ヨークシンシティ編」の完結編、「グリードアイランド編」がOVAとして制作されました。それから12年、休載にもめげず原作は「キメラアント編」が完結したので、2011年のアニメ化は「キメラアント編」「会長選挙・アルカ編」までが初めて作品化されました。
その次の制作会社は1970年代からの老舗、「マッドハウス」です。初期の作品で出崎統監督作品「宝島」「ガンバの冒険」「家なき子」などに多く加わった影響でもないのでしょうが、このアニメではAパート終了時やその回の終了時といった区切りに、効果的な「止め絵」が用いられています。
さて、原作はまたもや休載中でこのままコミックが進まない場合、このアニメが「決定版」となる可能性すらあります。なお、148話という長さでありながら、全話を通じてオープニングテーマが小野正利が歌う「departure!」で変わらなかった、というのも異例でしょう。
この歌が与えるアクティブなイメージは主人公ゴンの生き方と強くオーバーラップします。
アニメ「 HUNTER X HUNTER 」のストーリー
舞台は架空の国。文明はコンピューターネットや携帯電話があるなど現代社会とほぼ同じです。(ただし、飛行機は存在せずに飛行船が空の交通手段です。)
「くじら島」に住む11歳の少年ゴン・フリークスは、まだ会ったことのない父親「ジン」を求めて父と同じ職業「ハンター」につなろうと旅に出ます。しかし、ハンターは超絶的な能力を身につけ、常人では近づけぬ人外魔境に踏み入ることが前提ゆえ、資格試験も過酷なものでした。
ハンターを目指す過程で、ゴンは少年キルアと親友になり、謎めいた経歴のクラピカ、医師を目指す陽気な青年レオリオといった仲間と出会います。父親に会うため、という一本の糸に導かれる中で、ゴンは幾多の戦いを経験します。最強の暗殺者集団、「幻影旅団」と戦い、仮想現実ゲームである「グリードアイランド」をクリアするためにレイザーやゲンスルーといった強敵と戦います。そんな折、人類の脅威となる生物「キメラアント」が出現します。この生物は人間を捕食しては新たな能力を獲得して増殖するという危険な生物でした。
ハンター協会にその掃討が依頼され、ゴンとキルアも人類の存亡を賭けたキメラアント掃討戦に身を投じていく事になります。
「HUNTER X HUNTER キメラアント編 」は原作に近い表現で人気急上昇
「1999年版」でも作られている「グリードアイランド編」までは、声優や画調などから好みは分かれているようです。また、原作が進んでいる関係か、2011年版はグリードアイランド編までは1999年版に比べてかなりテンポよくストーリーが進んでいる印象で、ここでは主に「キメラアント編」について書いてみたいと思います。
このエピソードは、心情描写が多くなります。一瞬の判断が生死を分ける対決も多い一方、にらみ合いで相手の意図や心中を探る場面も少なくありません。
メルエムとコムギの「軍棋」がストーリーの重要部分を占めるという性質上、「静」の部分も多くなり、絵に動きがなくとも心情を語るという声優さんの演技力が要求される場面も多くなります。それゆえ、「動」の部分が好対照をなすのです。その良い例がネテロ対メルエムで、特にネテロが「百式観音」を発動させてからの描写はシリーズを通じて圧巻の戦闘シーンと言えます。
深夜枠に移ったという幸運(?)から、原作に近い残虐な表現もかなり踏み込んで描かれています。一見、キメラアントの主張は人類とは相容れないものですが、「生物」として人類を相対化すれば、違った視点も生まれます。
他の生物の肉を食べる人類とて、いつ逆の立場になるかもしれないという凄絶な相対化のためには、残虐とも言える描写も必要なものだも考えられます。
題名:「HUNTERXHUNTER」
監督:神志那弘志
出演:声優 潘めぐみ、伊瀬茉莉也、沢城みゆき 他
制作:日本テレビ、マッドハウス
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/hunterhunter/
公開日:2011年10月2日~2014年9月23日
上映時間:30分×全148話