WOLF’S RAIN(ウルフズレイン)は、2003年にフジテレビ系列局で放送された、ハードボイルド・ロードムービー風のSFファンタジー作品です。
WOLFという言葉がタイトルに入っていることからもわかるように、狼たちが旅をする物語です。一方、雨(RAIN)という言葉が何を意味するかは、最終話で明かされることとなります。
1998年に設立され、「鋼の錬金術師」「エウレカセブン」などを手掛けたアニメ制作会社・ボンズ(BONES)初期の代表作であり、アニメ作品に多くの楽曲を提供する音楽家・菅野よう子と歌手・坂本真綾が参加しています。
また、「デスノート」の夜神月役で有名な、アイドル的な人気を誇るイケメン声優・宮野真守の初主演作であり、現在とは異なる彼の演技を聞くことができます。
本来は全26話予定でしたが、途中に総集編4話が挿入され、テレビ放送26話・OVA4話の30話構成となりました。最終4話のOVA化は当時批判されましたが、現在も根強いファンが存在し、英語版・フランス語版などのDVDも販売されています。
荒廃した地球で展開する「 WOLF’S RAIN 」のストーリー
氷河期を迎えて荒廃した地球、生き残ったごく少数の人間たちは、ドーム都市に身を寄せて日々を過ごしていました。ドーム都市のひとつ、フリーズシティを、若い狼・キバが訪れます。
200年前に滅んだとされる伝説の生き物・狼は、「月の花に導かれて楽園へと向かう」という本能を持っており、キバもこのドーム都市から月の花のにおいを感じ取り、たどり着いたのでした。
キバを追ってドーム都市にやって来た、狼に家族を殺された過去を持つ保安官のクエントは、愛犬ブルーとともにキバを追い詰め、銃で仕留めます。キバは研究所に運ばれ、研究員のシェールと彼女の元夫の刑事・ハブに捕われますが、人間に化けた狼・ヒゲとともに研究所を脱出します。
同じ頃、貴族・ダルシアが研究所から花の娘・チェザを奪い、キバたちと対峙しますが、ダルシアとチェザは閃光とともにどこかへ消えました。
キバとヒゲは、人間に化けて不良少年を束ねるツメ、老婆に飼われていたトオボエと共に、ドーム都市を出てチェザを追うことを決意します。
「世界が終わる時に狼が現れ、花の娘に導かれて楽園へと向かう」という、クエントとシェールがつぶやく予言は本当なのか、花の娘・チェザとは何者なのか、楽園は存在するのか――。狼たちの旅が始まりました。
緻密な描写で見る物を惹きつける「 WOLF’S RAIN 」の出来栄えを堪能する
WOLF’S RAINは、主役・キバを演じる宮野真守やクエント役の石塚運昇などの声優陣、菅野よう子と坂本真綾というアニメ音楽界ではすっかりお馴染みとなった名コンビなど、制作陣が豪華な作品です。
ただ、最大の見どころといえるのは、緻密な描写ではないでしょうか。
動物が主人公のアニメ作品では、視聴者に親しんでもらうために造形をデフォルメして、人間のように表情豊かにすることがほとんどです。
WOLF’S RAINは狼が主人公ですが、まるで本物を見ているかのようにリアルであり、逆立つ毛の一本一本が感じられるようですし、躍動する筋肉や鋭い牙なども、とても細かく描かれています。
この作品の狼は、「人間に化ける」という能力を持っており、主人公・キバたちも人間の姿で描かれることがほとんどです。それでも、人間の姿が本来の姿を踏襲したものとなっており、狼の姿もリアルであるために、彼らが狼であることは違和感なく受け入れることができます。
また、ロボットをはじめとする兵器に見られるメカや、ルネサンス期のヨーロッパを思わせる重厚な建物、仮面舞踏会に集う貴族たちの衣装など、過去とも未来ともつかない不思議な要素が多く登場する作品であり、ここでも時代考証のもとに緻密な描写が行われることによって、その世界観を支えています。
ストーリーも見逃すことができません。世界が滅ぶ頃に狼が現れ、花の娘とともに楽園に向かうというおとぎ話のような物語は、狼を追う人間たちとの愛憎や、花の娘を狙う謎の貴族たちとの闘いによって深みを増します。楽園を目指すわくわくした旅は、世界の破滅が近付くにつれてダークな、絶望的なものとなっていきます。
すべてが終わり、失われようとする時に、ようやくすべての謎が明かされるのです。
アニメの題名:WOLF’S RAIN
作者/監督:岡村天斎
主な声優(複数可能):宮野真守、三宅健太、陶山章央、下和田裕貴
製作会社:ボンズ
公式サイト:不明
公開日:2003年1月~7月
上映時間:720分(全30話)