先日アップされた『機甲界ガリアン』のコラム、幸い多くの方に読んでいただけた様で、嬉しい限りでした。
今回の熱血アニメ列伝では、ガリアンの高橋監督の代表作の一つを取り上げます。その作品とは『蒼き流星SPTレイズナー』!
放送は、1985~86年と、かなり前(実に30年!)の作品ですが。今見返しても色あせない魅力を持った本作。当時の世相なども色濃く反映されていて、色々な意味で興味深いですが、まずはいつもの通りあらすじから!
僕の名はエイジ!地球は狙われている!『 蒼き流星SPTレイズナー 』のあらすじ
時に1996年。人類は火星にまでその勢力範囲を広げていて、各国の基地が火星に築かれているような、そんな時代。
14歳の少女アンナが参加する「コズミック・カルチャー・クラブ」(宇宙体験教室)が、火星に到着する時からこの物語は始まります。
火星や宇宙そのものを勉強する為に、多くの少年少女が参加する「コズミック・カルチャー・クラブ」ですが、火星に到着してまもなく、彼らのいた国連の基地は、所属不明の人型機動兵器の交戦に巻き込まれます。
青い機体とそれと敵対している3機で構成されている部隊の激しい戦闘。やがて、青い機体以外の部隊は火星の国連基地へとその攻撃の矛先を向けます。
ソビエト軍等の戦闘機がこれに立ち向かいますが、この謎の機動兵器の三次元的な運動性能には全く歯が立たず、基地の大人たちも次々と命を落としていきます。
機動兵器の部隊は目的を果たしたのか、突如撤退。残った青い機体だけが生存者が待つ基地に近づきます。そして、その搭乗者が基地の中へとやってきます。
その搭乗者がヘルメットを外すと、我々地球人と全く変わらない外見の一人の青年です。基地のスタッフが彼に「所属は?名前は?」と問うと、その青年はこう答えます。
「グラドスから来た。僕の名はエイジ。地球は狙われている……!」
後にレイズナーを代表する台詞の一つになるこのフレーズを喋る青年エイジから、アンナ達地球人は驚愕の事実を知ります。
先ほどの攻撃を仕掛けてきたのは、地球から遠く離れた「グラドス」なる星からやってきた人型機動兵器、SPT(スーパーパワードトレーサー)である事。グラドスは、その強大な軍事力で、地球への侵略を計画している事。
その後の戦闘で、アンナ達の他の仲間は次々と死亡。「コズミック・カルチャー・クラブ」の引率者エリザベス博士、そのメンバーのアーサー、シモーヌ、デビッド、ロアン、そしてアンナ。
この6人にエイジを入れた7人は、時に諍いを起こし、時に協力しながら、火星を脱出し地球にグラドス侵攻の危機を伝える為の帰還をしようという、彼らの苦しい旅路が今始まるのでした。
冷戦時代の世界観の延長上?レイズナーの独特の空気とは
作品が放送された1985年から、約10年ほど未来の時代がこのレイズナーの時代設定ですが、その設定の年代すら既に20年もの年月が過ぎています。
1985年の当時は、まだアメリカとソビエト連邦(今のロシアですね)が緊張状態にある、「冷戦」と言われていた時代でした。
作品を作っていたスタッフは、まさか後にソビエト連邦が無くなる事など、全く予期していなかったのでしょう。このレイズナーの世界設定には、割とこの「冷戦」という世界観が色濃く反映されています。
そもそも、火星に地球人が進出しているのも、米ソの軍事的対立が宇宙にまで拡大している、という設定の上に成り立っています。
放送当時から30年以上経った現在でも、火星には基地など作られていませんから、いかにこのレイズナーの世界設定が「IF(もしも)」の世界観に彩られているのかが分かるのではないでしょうか?
まあ、当時は現代の「アメリカが世界のリーダー的存在になり、ソ連は崩壊してロシアはあまり大国感が無い」なんて状況の方が「IF」っぽかったのですが。
何にせよ、当時の世情がこのレイズナーという作品の独特の世界観を形作っていたのは間違いありません。そして、それがこの作品の一つの魅力でもあると言っても過言ではないでしょう。
番組中盤で、グラドス軍への反抗の為に米ソが協力する、という展開がありますが、それはかなりの「奇跡的な出来事」として描かれていました。
「異星人という脅威の前に地球で敵対していた勢力が手を取り合う」
という、感動的なシチュエーションは、当時の米ソの対立構造があってこその、ストーリー展開とも言えます。今だったら、普通に各国協力して、異星人に対抗するのが当たり前みたいなところありますものね。
(ISISなどの問題で、世界は色々な敵対がありますが、まあ、ここではその話をするのは野暮ってもんでしょう)
この独特の世界観も、もしこれから初めてレイズナーを見る時の、注目して欲しいポイントの一つかもしれません。
SPTの格好良さと必殺武器のV-MAXが何より熱い!

時代設定的なレイズナーの魅力を前項では語りましたが、この列伝では何と言っても「熱血」的な要素を語らないと始まりませんよね。
勿論、この連載に取り上げるのですから、レイズナーにも「熱い」ポイントはあります。それは何と言っても、この物語の核になる人型機動兵器「SPT」が文句なしに格好良い!という事です。
以前この連載で取り上げた『聖戦士ダンバイン』のオーラバトラーを語った時と、若干内容が被りますが。ダンバインのコラムでは、自分はこのように書いています。
“よくSNS等であがる議題として「ロボットアニメで乗るなら何に乗りたい?」ってありますが、あくまで個人的にはオーラバトラーは乗りたいロボットの一つです。”
ここでは、オーラバトラーを「乗りたいロボットの一つ」と書いていますが、今回のレイズナーの人型機動兵器SPTは、自分の中でオーラバトラーと双璧をなすほどの「乗りたいロボット」なのです!
オーラバトラーも、8m前後とかなり小型サイズ、そして空中を自由に飛び回る飛行性能を有し、デザインも秀逸でした。オーラバトラーの場合は、ここに「ファンタジー色」の味付けがされていました。
SPTの場合は、上記の魅力に加えて「地球上の近代兵器的特色」が色濃く出ているところが魅力の一つと言えます。
SPTの操縦席は、基本的に頭部にあります。そして、その頭部は現代の戦闘機のように、キャノピーに覆われ、外が見渡せる構造をしているのです。
SPTの全長は10m前後と、オーラバトラーと同様の小型サイズで、このサイズと頭部の形状から、SPTが「現代の戦闘機のデザインラインを発展させたもの」である事が伺えます。そして、それがSPTの魅力の一つになっているのです。
人型機動兵器でありながら、SPTは空中でクルクルと回転する描写がかなり多くありました。これは「戦闘機が人型になった時にこんな動きをするに違いない」という思いが込められての描写だと思われます。
オーラバトラーも、オーラ力(ちから)さえあれば、誰でも操縦が比較的簡単に出来る、となっていますが、SPTも搭載している対話型のコンピューターのアシストによって初心者でも比較的簡単に操縦が可能です。
実際に、作中でもSPTに乗った事のない、地球人のデビッドとロアンは乗りはじめてすぐに実戦を経験して、それなりに戦えています。
この簡易な操縦性も、オーラバトラーと共通するSPTの「空を自由に飛べる」機動兵器としての魅力と言えるでしょう。
そんな色々なSPTの魅力から、「オーラバトラーとSPTは凄く乗ってみたい!」と、SNS等ではよく言ってるのでした。この主役メカの魅力だけを取っても、熱い要素の一つと言って良いのですが、レイズナーにはもう一つの「激熱」ポイントがあります。
それが、物語中盤から登場するレイズナーの必殺武器「V-MAX」です。
エイジの「レイ、V-MAX発動!」というかけ声に反応して、レイズナーに搭載されているナビゲーションコンピューター「レイ」が「レディ!」と応答します。
そうすると、レイズナーは青い光に包まれた状態で、通常の三倍ほどのスピードで飛行することが出来るようになるのです。更に、この青い光は特殊なフィールドを形成していて、ほとんどの攻撃を無効化します。
レイズナーはV-MAXを発動させた状態だと、まさに無敵の強さを発揮。作品タイトルの通りの「蒼き流星」となって、敵を撃破していくのです。
このV-MAXの格好良さと来たら!まだ未見の方は、是非このレイズナーの「V-MAX」の魅力を堪能して欲しいものです。
『 蒼き流星SPTレイズナー 』の独特の世界観とキャラクターの魅力溢れる高橋作品は必見!

レイズナーの魅力を色々と語ってきましたが、この魅力の源は、まさに前回のコラム『機甲界ガリアン』と同一の監督をなさっている「高橋良輔」さんにあると言っても良いでしょう。
[kanren postid=”36766″]ガリアンのヒロイックファンタジー的魅力も、素晴らしかったですが、今回のレイズナーは「王道ロボットSFアニメ」の魅力に溢れています。
そして、ガリアンもレイズナーも、この列伝では取り上げていない『装甲騎兵ボトムズ』も(外伝のメロウリンクは取り上げましたが)、やはり高橋監督のオリジナリティ溢れる独特の世界観が魅力の一つで、まさに「高橋ワールド」と言えますよね。
世界観も勿論良いんですが、各作品のメインキャラクターの設定も本当に魅力的です。ジョジョ、キリコ、エイジ。全て別のタイプの主人公ですが、ちゃんとそれぞれに魅力が溢れています。
ところで、レイズナーを「スーパーロボット大戦」で知ったという方も多いでしょう。最近はあまり参戦をしていませんが、またあのゲームの中でレイズナーを使いたい!と思っている方も多い筈。
そんな方々の中には、レイズナーを実際には視聴していない方も多いのではないでしょうか?
このレイズナーも、ガリアン同様、バンダイチャンネルなどでの配信で手軽に視聴が可能だと思いますので、是非今回のコラムで興味を持った方は「高橋ワールド」を少し意識しながら、見てみてくださいね☆
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