劇場版 名探偵コナンシリーズで見る“面白い話”の作り方

以前にも劇場版名探偵コナンシリーズについて語ってみたことがあります。その時は作品の紹介だったのですが、今回は少し色を変えまして、劇場版コナン作品の構成について触れてみようと思います。

 『名探偵コナン』は劇場版になるとスケールが大きくなったり、アクションが激しくなったりするんですよね。中にはTVアニメシリーズとは別ものなんじゃないかっていうくらい、専門的なものをテーマにしている映画もあったり。

凄いのは、物語の構成に無駄がないというところなんです。子供から大人まで楽しめる工夫が成されているのは勿論として、伏線とか盛り上げ方とか、「なるほどな」と思える点が多いんですよ。

とまあ前置きはここまでにして、さっそく始めましょう。

解説の都合上、コナン映画のネタバレを含みます。犯人や動機をばらすことはしませんが、展開や伏線のネタバレが含まれていることを予めご了承願います。

起承転結の「起」には重要なキーワードが盛り込まれている

起承転結の「起」とは物語の導入部分です。その作品がどのような話なのか、流れを見せるための重要な部分です。けれど、説明ばっかりで退屈にさせてしまってもいけません。作品を最後まで見てみようと思わせる、取っ掛かりの部分でもあるのですから。

コナン映画における「起」の部分では、日常シーンやギャグで視聴者を楽しませつつ、さりげなく物語のキーになるようなアイテムやキーワードが出現してきます。

たとえば、「水平線上の陰謀」では舞台となるグルーズが出てきます。子供たちと遊んだり、ランが子供たちからプレゼントを貰ったりします。何気ない日常シーンのように思えて、実はこの遊びやプレゼントが終盤のストーリーに関わってくるのです。日常シーンの中に伏線が組み込まれているため、退屈で説明くさい描写になっていません。楽しませつつ重要なシーンを描写する工夫が成されているのです。

他にも、「時計じかけの摩天楼」ではランが新一と約束しているデートの話をするというシーンがあります。デートを楽しみにしているランに、ニヤリとしてしまいたくなるようなシーンです。が、実はこの話を聞いていたある人物の手によって、デートの行き先が爆破されるという事態になっていきます。ヒロインとのラブコメ的要素の中にも、伏線が入り込んでいるのです。

拾ったもの、用意したもの、出会った人、した会話……こういった日常シーンを面白くするための要素が、後々の展開に関わってきます。事件やアクションばかりでは物語に緩急がつきません。だからこその日常シーンなのですが、ただ平穏な日々を流すだけでなく、すべてのシーンが無駄なく作用しているというわけなのです。

ギャグもギャグだけでは終わらない

コナンには「絶海の探偵」というイージス艦を舞台にした映画があります。

「絶海の探偵」では毛利小五郎が金ピカの名刺を用意するというシーンがあるのです。これは、派手な名刺にコナンが呆れたり、毛利小五郎がばらまいてしまった名刺をランが回収する――というギャグシーンです。

実はこれが伏線になっているのです。

物語の後半、コナンが船上で犯人を追いかけるという描写があります。その時にコナンは名刺を踏んづけ滑ってしまいます。そのせいで犯人を見失ってしまうのです。

ギャグシーンとしてばらまいたはずの名刺が、ここで生きてくるのです。

伏線は二度回収する

さて、コナンの足を引っ張るためにもう一度登場した名刺ですが、実はさらに出番があるのです。

「絶海の探偵」の終盤では、海へ落ちてしまったランを捜索するという話があります。

物語の序盤、「起」にあたる部分で、コナン達はイージス艦に乗るにあたって携帯を回収されてしまいます。その際に、ランは光彦から電波を受信する腕時計を借りています。

勘の良い人なら、この時に電波時計が物語に関わってくるな、と気付くかもしれません。

事実、ランが遭難した際にその時計の反応を利用して捜索するという流れになるんです。で、ランを無事発見して伏線を回収――とはならないのがコナンです。海は広く、大体の位置を特定できても、ランを見つけるには至らなかったのです。

そこで活躍するのが名刺です。毛利小五郎のばらまいた金ピカ名刺を、ランは回収しています。コナンは海面に散らばった名刺の煌めきを発見し、それを辿っていくことでランを見つけ出したのです。

ギャグに使った名刺でコナンの足を引っ張り、かと思えば今度はコナンを助ける。伏線の二度回収です。しかも、電波時計の伏線も回収しているので、複数の伏線の同時回収でもあるんです。

二転三転する展開

名探偵コナン「江戸川コナン失踪事件 史上最悪の二日間」

コナンの映画は、事件発生→推理→犯人を導き出して逮捕→完!

という流れではありません。大体の作品が、犯人を特定してからが本番なのです。

先に述べた「絶海の探偵」を例に取りますと、一連の事件を解決した後に、実はもう一つの事件とその犯人が存在することが発覚します。それをも解決した後に、ランが海に落ちていたことがわかるのです。

「天国へのカウントダウン」では連続殺人事件を解き明かした後に、黒の組織が爆破したビルからの脱出劇が始まります

「時計じかけの摩天楼」では、犯人を確保した後にランのいる建物に爆弾が仕掛けられていることが発覚し、もうひと波乱起こります。コナンは新一の声で建物に隔離されてしまったランに指示を与え、爆弾を解体させます。順調に解体が進んでいるように思わせ、最後の最後にどちらを切ればいいのかわからない導線が二本、出てくるのです。

ここに、序盤の伏線やらラブコメとしての要素などが絡み合い、物語を大きく盛り上げてくるのです。

つまり、コナンの映画は“起承転結”ではなく、”起承転転転結”という風に、終盤を段階的に盛り上げるよう工夫されているのです。終わったと思ったところでさらに盛り上げてくる。だからこそコナンの映画は面白いのです。

 

いかがだったでしょうか。

コナンファンは勿論、創作活動をしている方にもコナン映画を楽しんでいただけたらなぁ――思い、今回の記事を書きました。なにかのお役に立てれば幸いです。

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