今回のコラムは本当は違う作品を書く予定でしたが、ある意味で2018年のアニメ界の方向性すら占うような「熱い」作品が公開されたので、それを取り上げたいと思います。そのアニメとは、現在絶賛上映中の劇場映画アニメ作品『 劇場版 マジンガーZ / INFINITY 』!いやあ、これが本当に熱かった!!
まさに今年のアニメ界は「熱いアニメ」から始まったと言っても過言ではない!そんな作品が年始から登場してくれて、個人的にもとても嬉しく思っております。では、いつもの通り、あらすじから行ってみましょう!
お前は神にも悪魔にもなれる……!『 劇場版 マジンガーZ / INFINITY 』のあらすじ
『マジンガーZ』『グレートマジンガー』の二つの作品の長い戦いが終わってから、10年の月日が流れた現代。
主人公、兜甲児(かぶとこうじ)は、英雄的な存在として、人々の記憶に残っているヒーローのような存在でありながら、ロボットパイロットとしては現役を退き、研究者の道を進んでいました。
甲児の家である「兜家」は、マジンガーZを作り上げた祖父、グレートマジンガーを作り上げた父がいて、甲児はやはりその血を受け継いでいるかの様に、研究者としても十分に名を馳せています。
そんな彼でしたが、否応なしに再び戦いの場に戻る事になります。
きっかけは、甲児が発見した古代ミケーネ人が遺したとされる「魔神型」の超巨大遺跡「インフィニティ」でした。
そのインフィニティからは、完全に女性の姿をした(それもかなりの美少女の)生体コンピューターユニットとも言うべき「リサ」が生まれます。
そして、ほぼ同時期に、アメリカのテキサスでは、かつて甲児達が倒した筈のDr.ヘルが操っていた戦闘ロボット「機械獣」が大量に現れます。
これを撃退するために出撃した「もう一つのマジンガー」である「グレートマジンガー」の操縦パイロット剣鉄也はこの機械獣軍団をそのグレートマジンガーの比類なき戦闘能力で撃破していきますが、その戦闘の後に消息を絶ちます。
そして、機械獣だけではなく、あの男も復活を遂げるのでした。そう、兜甲児の宿敵とも言うべき、悪の天才科学者「Dr.ヘル」。死んだ筈の彼が一体何故?
かつて自らが率いた機械獣軍団(配下の部下「あしゅら男爵」と「ブロッケン伯爵」と共に)を用いて、日本に再び襲い掛かるDr.ヘル。甲児は、再びマジンガーで戦い、これを退けることが出来るのか?鉄也の行方は?
今、マジンガーZの最後の戦いが始まります……!
リスペクトと緻密な再設定!何より旧作に対する愛情が熱い!!
『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』のあらすじ、いかがだったでしょうか?
上映中の作品である事と、いかんせん90分ほどの内容であった為に、ネタバレを極力しない方向であらすじを書こうとすると、かなりの難しさがあって、この部分だけで実は数日の執筆時間がかかっています。
割とこの連載を始めてからこんな事は初めてだったりして。
普通にこの映画を「マジンガーシリーズ」が好きな方が見たら、その戦闘シーンやらグラフィックやら、諸々に熱い気持ちを持つとは思うのですが。
個人的には、以前こちらでも取り上げた『宇宙戦艦ヤマト2199』と同じような、「緻密な再設定」と、「作品に対するリスペクトの高さ」が感じられて、またそこが熱いのですよね。
昨今のリメイクブームは、昔のファンが喜ぶ作品も多いものの、作画崩壊でトホホな気分になったり、変な改変が多くて、残念な気持ちになったりする事もしばしば。
でも、ヤマト2199もそうですが、今回の『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』は、その辺りの心配は少なくとも旧作のファンの方はほとんどしなくて良いと思います。
各種SNSでも、絶賛の嵐ですし、まあ多少の時空の歪み的な現代の時世に合わせたテクノロジーの進歩が少し気になる方はいらっしゃるかもしれませんが。

旧作が1970年代の時代背景なので、10年後と言えば、まだ昭和の時代。なのに、ほぼ現代の我々と同じような生活をしているように思える描写とかは、あるいは拒否反応を持つ方もいるかもしれません。
しかししかし!多少の細かい突っ込みどころは目をつぶってでも、今回の作品には何しろ「旧作への愛」が溢れている、と自分は感じました。
ヤマト2199のコラムの時も書きましたが、旧作で突っ込みところだったような設定を、リアルな解釈を加えた再設定を施す、という部分は本作にも存在します。
例えば、マジンガーZの必殺武器の一つである「ミサイルパンチ」。腹部からかなり巨大なミサイルが発射される兵器の一つですが。
「マジンガーのどこにそんなミサイルがあるねん!」
って突っ込みは、放送当時から割とあった事なんですよね。しかし、今作ではこの必殺武器は
「腹部に3Dプリンターが存在していて、瞬時にミサイルを形成して発射している」
という設定になっているのです!実際、この3Dプリンターは名前も「光子力3Dプリンター」と命名されており、終盤の決戦でとあるキャラクター達がこの装置を駆使して敵に攻撃を仕掛けるシーンもあります。
その他、現代のIT技術がインフラとして整備されていたり、旧作の時代にはなかったような技術が普通に存在して、それがマジンガーの超技術に使われている事を匂わす部分も多々あります。
是非、そのような部分は劇場で実際に確認してもらうとして。
個人的には、今回のシナリオも賞賛に値する部分の一つだと思っています。特に最後の方の甲児達の台詞のやり取りには、「人間賛歌」のような熱い気持ちを感じて、不覚にも少し目がうるっと来たぐらいです。
ある意味でヒーロー物、正義とは何かを問う作品ならではの「生命を紡ぐということ」の答えのようなものを、シナリオを書かれた方が見ている者達に伝えたかったのかなあ?などと思ったりもしました。
この部分だけでも、今回の『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』は「熱血アニメ」と呼んでも良いのではないか!?と思うぐらいには、素晴らしいストーリーでした。
新旧のファン両方が納得?マジンガーワールドの深さが熱い!

今回の『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』はリメイクとしての高クオリティ度が本当に素晴らしい作品だと思うのですが、それ以外の様々な魅力があるので、それを最後に語って終わりたいと思います。
自分は今回の作品を、土曜日の午前中の回の上映で見たのですが。見事に自分の同世代(アラフォー~アラフィフ前後の方々)の男性ばかりが来場していました。
改めて、「この世代がどストライクな作品なのだなあ」という印象を強くしたのですが。
古くからのファンがフィーバーしているその一方で、やはり、今回のこのリメイクは、『スーパーロボット大戦』シリーズの影響が少なからずある事は確かなようですね。
スパロボシリーズのプロデューサーの寺田氏と今作のプロデューサー金丸氏の対談記事などを読む限りでは、かなり金丸氏はスパロボの影響を受けている世代であり、本作にフィードバックがされている部分も多々ある事が伺えます。
そんなスパロボでしか知らない方も多い「マジンガーシリーズ」。以前、自分も今作の制作が発表されたタイミングで、『劇場版マジンガーシリーズ』のコラムを書いた事でも思いいれが深い作品の一つです。
熱血アニメ列伝その21 俺ならマジンガーを空から攻めるね『 劇場版マジンガーシリーズ 』
今回の『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』では、スパロボ的な新しい世代へ向けているネタもたくさん含んでいるところもあるようですが。
そもそも巨大遺跡「インフィニティ」からして、その昔(80年代)同人誌で発行された『たのもしい幼稚園』というファンブックに載っていた、パロディ作品『ZファイナルマジンガーX』の主役機のネタが使われている気がしますし。
(ちなみに、今は無き「みのり書房」さんから出ていた『月刊OUT』というアニメ雑誌で同様のネタが最初に掲載されています。嘘記事的な1ページネタを、制作した方が同人誌でより具体的にパロディとして披露した、と言う経緯がありました)
と、言うのもこの「ZファイナルマジンガーX」は全高が3キロを越えており、マジンガーが東京タワーに乗り込んでこれをパイルダー代わりにして、ドッキング。その巨体で悪と戦う、という設定だったのです。
そんなネタがヒットの理由という訳ではないと思いますが、今回の作品が興行成績的にもかなりヒットしているようで、作品としての成功を受けて「同じスタッフ制作でグレートマジンガー篇が見たい!」という声などもちらほら。
今作の上映に関連して、小説版や漫画版が刊行されており、特に漫画版の『インターバルピース』は購入して読んだのですが、原作の戦いから空白の10年間を丁寧に描いていて、実に副読本的に良作でこれもまたたまりません!
マジンガーシリーズがいかに拡散され、様々な作品を生み出しているかは、追及していくとなかなかディープさを実感出来るではないかと思います。でも、またそういうディープさも突き詰めると熱いんですよね。
今回のコラムは、あにぶさんの想定ユーザーのターゲットとしてはかなり古いネタが多く、若干心配ではありますが。そんな部分はともかくとして、この『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』はとても素晴らしいアニメーション映画だと思います。
是非、上映期間が終わる前に劇場の大きなスクリーンで見る事をお勧めします!
最後になりましたが、いつも『熱血アニメ列伝』を読んでくださって、本当にありがとうございます。2018年も、このコラムをご贔屓にしてくださると、著者も励みになります。何卒、この連載を今年もよろしくお願いいたします!
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