1980年代といえば、日本中がバブル景気に沸いた頃。そんな時に生まれたアニメが今回ご紹介する「 メガゾーン23 」。このアニメは1980年代の東京を舞台にしたロボット美少女アニメである。
「 メガゾーン23 」のあらすじ
“一番いい時代”のティーンエージャー達が物質的な豊かさを極限まで享受しており、それらを資に確かな愛や夢や幸せな未来までも手に入れようとしていた時代。少年の矢作省吾もまた白バイに追いかけられながらオートバイを駆り、街中でナンパした美少女の高中由唯と恋愛を楽しむはずだった。
そんなある日、矢作は友人である中川真二に呼び出されると、巨大な未来型のオートバイを目の当たりにする。真二は勤め先の実験倉庫から盗み出したといい、そのオートバイのテストドライバーをしていたというが、クランクケースカバーには“バハムート”のロゴが書いてあった。
そこへスーツ姿にサングラスの男達が現れ、銃撃を受けた真二は銃殺される事に・・・。巨大な未来型のオートバイを駆って逃げのびた省吾は、後日このオートバイの正体を明かすべくテレビ局の番組に電話をかけるが……。
欲望は果てしなく
「メガゾーン23」は1985年より発売されたオリジナル・ビデオ・アニメーション3部作である。
当時の日本が、空前の好景気に見舞われた時代に製作されたアニメとして鑑賞すると興味深い。まるで男の子のおもちゃ箱をひっくり返したような、ストーリーテリングの材料の豊富さに圧倒される。当時、ティーンエージャーの憧れである美少女との恋愛やオートバイが、アニメ好きの少年が好む美少女アイドルや変形メカに作品上で昇華されており、美少女との濡れ場やグロテスクなバイオレンスまでもが描写されていて、
未来の兵器を手に入れた若者、という独特の特権意識を描き出している。
欲望の終わり
「 メガゾーン23 」のストーリーもティーンエージャー達の青春群像から、宇宙戦争ならびに地球を管理するアダムと呼ばれる巨大コンピューターまで幅広い世界観の設定で、主人公の生死と人類の存亡をかけて、ロボットアニメ特有の迫力あるバトルシーンも豊富にある。
そして、“未来の兵器を鍵に主人公は、自分達が巨大なコンピューターに管理された巨大な宇宙船で暮らしていることを知り、他の巨大宇宙船と宇宙戦争状態に陥っている現実を目の当たりにする”のだが、この物語仕立てが壮大なサイエンスファンタジーながらも、“世界の終末”と言う構成で巧みに鑑賞する側を、物語の世界へ惹きつけている。
メディア普及の黎明期で
当時の一般家庭にビデオデッキがやっと普及し始めた頃で、本オリジナル・ビデオ・アニメーションが1985年度ビデオ売り上げ第2位を記録した。2年前に家庭用ゲーム機、任天堂ファミリーコンピューターが発売されインターネットもごく一部で開始されていたが、マイクロソフト社のウインドウズが誕生したのもちょうどこの頃である。
テレビアニメーションが商業的に一定の成果を出し、いよいよ他のメディアの開発と同時に進出を始める頃のアニメで、視聴者の誰もが次にどんなメディアを楽しめるのかワクワク期待していた高度消費社会の到来を告げるのが、「メガゾーン23」という作品である。
文章:kyouei-drachan