二人の少女の関係を儚く描いた最高の青春映画「 リズと青い鳥 」

二人の少女の関係を儚く描いた最高の青春映画「 リズと青い鳥 」

2018年4月21日から全国で公開されている劇場アニメ「 リズと青い鳥 」。「響け!ユーフォニアム」シリーズを原作とした作品ということで、さっそく拝見してきました!!!!

感想をいうとストレートに面白かった!です。とにかく切なくて、儚くて、脆くて、すぐに崩れそうな…とかなんとかとにかく詩的な感想が止まらなくなるような作品です。

最上級生になって将来の進路のことやコンクールのこと、いろいろなことに悩まされる二人の微妙なバランスの関係性とすれ違いを、とにかく美しい絵と音楽で丁寧に、そして残酷に描いています。

今回はこの作品について、作品の重要なネタバレを含みながら感想や考察をご紹介していきたいと思います!!

「 リズと青い鳥 」のあらすじ

ーひとりぼっちだった少女のもとに、青い鳥がやってくるー

鎧塚みぞれ 高校3年生 オーボエ担当。
笠木希美 高校3年生 フルート担当。

希美と過ごす毎日が幸せなみぞれと、一度退部をしたが再び戻ってきた希美。
中学時代、ひとりぼっちだったみぞれに希美が声を掛けたときから、
みぞれにとって希美は世界そのものだった。
みぞれは、いつかまた希美が自分の前から消えてしまうのではないか、という不安を拭えずにいた。

そして、二人で出る最後のコンクール。
自由曲は「リズと青い鳥」。
童話をもとに作られたこの曲には、オーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「物語はハッピーエンドがいいよ」
屈託なくそう話す希美と、いつか別れがくることを恐れ続けるみぞれ。

ーずっとずっと、そばにいてー

童話の物語に自分たちを重ねながら、日々を過ごしていく二人。
みぞれがリズで、のぞみが青い鳥。
でも……。
どこか噛み合わない歯車は、噛み合う一瞬を求め、まわり続ける。

「響け!ユーフォニアム」シリーズであって「響け!ユーフォニアム」シリーズではない!

まず最初にこれ。

一番最初に「響け!ユーフォニアム」シリーズを原作とする~と述べましたが、タイトルにも「響け!ユーフォニアム」とはあえて入っておらず、あくまで

「 リズと青い鳥 」という一つの作品

なんです。
もちろん原作小説やTVアニメをみておけばより作品を楽しむスパイスになることは間違いありませんが、むしろ変な先入観や事前知識なくみたほうが楽しめるかもしれません。

タイトルにあえて「響け!」を入れなかったのは、これはあくまで”北宇治高校の物語”ではなく

“鎧塚みぞれと傘木希美の物語”である!

ということを印象付ける想いがあったからだと思います。
TVアニメ版の「響け!」は、全国を目指す北宇治高校吹奏楽部にスポットを当てた努力・友情!みたいないわゆる部活ものアニメという作品でしたが、これはみぞれと希美の二人の淡い関係性にフォーカスを当てて描いた恋愛感情にも似た人間関係の物語なんです。
これまでの主人公で「黄前久美子」はほとんど登場せずに、みぞれと希美だけの空間や物語が紡がれていきます。
キャラクターデザインを変えたことも、作品として違うものなんだというメッセージ……なのかもしれません。

とにかく、これはTV版を観た人も観なかった人も楽しめる作品です。

二人の微妙な関係性

二人の少女の関係を儚く描いた最高の青春映画「 リズと青い鳥 」

画像引用元:©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

中学時代からずっと一緒に吹奏楽部の活動に励んできた”鎧塚みぞれと傘木希美”
人付き合いが苦手で消極的な”鎧塚みぞれ”と気づけば周りに人が集まってくる人望の厚い明るい性格の”傘木希美”
部活をやめてしまった”傘木希美”と部活を続けていた”鎧塚みぞれ”

作中はいろんな場面でこの正反対な二人を作中に登場する童話の『リズと青い鳥』に重ねながら描いていきます。

お互いに幼馴染で親友。みぞれはその性格ゆえになかなか人との付き合いが苦手なのですが、唯一心をオープンにしているのが希美です。
希美のために吹奏楽部にいて、希美が全てで、希美のために、希美のために、大げさでなく希美に依存しているように執着する、まるで童話の中で青い鳥といつまでもそばにいる『リズ』。

一方の希美は、常に周りには人がいて誰でも分け隔てなく人を愛し、愛されている明るい少女。まるで童話の中で突然現れてリズのそばを飛び回る明るい快活な少女の『青い鳥』。

でも、希美はみぞれを部活に誘っておきながら黙って勝手にやめてしまったりと(この辺りはアニメ第二期を観るといろいろわかるかもですが…)、あくまで希美にとってのみぞれは特別な存在というわけではないのです。

映画冒頭のシーンではひとりで歩を進める希美をみぞれが追いかけている形になっているシーンだったり、希美がハグをしようとしてやめたりっていうシーンなんかは非常に簡潔に二人の関係性が現れている気がします。

それで、この微妙なつかず離れずな歪な関係がとにかくミソ。

みぞれは童話の中で青い鳥を自然の中にかえしてしまう『リズ』の気持ちをどうしても理解できませんでした。『リズ』は私、でも『青い鳥』である希美を私は離したりはしない。
この二人の関係性を表した童話の『リズと青い鳥』がこの物語の重要なキーになっていきます。

本当の二人の関係性

そんな二人の関係性は少しずつ、少しずつ変わっていきます。

これまで希美に依存しっぱなしだったみぞれの閉じた世界観をこじ開けたくれるキーパーソンとなるのが剣崎梨々花という、みぞれと同じダブルリードパートでオーボエを担当する後輩。
つまりTV版にはいなかった新たなキャラクター。

梨々花のおかげでみぞれの世界は少しずつ、少しずつ広がっていき、そしてこれによって二人の関係はさらに変わっていきます。

今までは、希美が全てだったみぞれのことを希美も少しはわかっていました。そんなみぞれがプールに行くのに「他の子も誘っていい?」と言い出します。
この発言に希美は、うれしいとも悲しいとも感じさせないびっくりしたような表情をします。

そしてもう一つこの二人の関係性を一気に変える出来事があります。

それは進路に関すること。
進路のことなんか考えられずにいたみぞれに対して新山先生は音楽大学に進学することをすすめます。しかし、実は進路のことを考えらずに進路調査票を白紙で出してしまったのは希美も同じでした。
それでも音大に誘われたのはみぞれだけ。いつまでも対等な立場であると思っていたみぞれとの関係に格差があることを感じはじめます。

そう、これまではみぞれが『リズ』、希美が『青い鳥』、そういう風に重ねようとしていました。

しかし、本当は逆でした

本当に音楽の才能という羽をもっていたのはみぞれのほうで、それを鳥かごに縛り付けていたリズは希美のほうだったんです。
そして、自由な青い鳥を突き放すことも『リズ』なりの愛なんだとみぞれは『リズ』の気持ちをようやく理解するのです。

終盤の演奏シーンは圧巻

二人の少女の関係を儚く描いた最高の青春映画「 リズと青い鳥 」

画像引用元:©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

終盤に一番の問題となっていたみぞれと希美のソロの掛け合いがある第三楽章を、みぞれからやらせてください!といいます。みぞれがついに羽ばたいたのです。

そして、これまでとは全く違う、本気の演奏をします。どこか希美に遠慮していた、そんな気持ちを取っ払ったみぞれの様々な気持ちが入り混じった圧巻の演奏は、希美だけでなくまわりの人間の心をも揺さぶります。

…もちろん僕も揺さぶられました。本当に圧巻で最高の演奏シーンです。息を吸う音まで含めて全てをきいてほしい!!!!!!!
鑑賞していたすごく気になった点ではありますが、それは普段の「音」が少ないという点。BGMというかバックで流れる音楽を意図的に少なくして、会話と会話との間を大切にしている印象がありました。
そしてこのラストの演奏シーンに全部をもってくるための演出なんじゃないかと僕は思います。とにかく劇場できいてほしいです。

この演奏を聴いた希美は思わず涙を流してしまいます。
圧倒的な実力差を目の当たりにして、嫉妬やいろんな感情が渦巻いていきます。

それでも、希美は「みぞれのソロを完璧に支えるから ちょっと待ってて」と言います。自らこの気持ちのモヤモヤに支え役という落としどころに落としたのです。

大好きのハグ

それでもみぞれにとって希美が格下の存在になったというわけでは決してありません。これまでもこれからもみぞれにとっての希美は特別な存在で大好きな存在なんです。
部活に誘ってくれたこと、明るいところが、声が、仕草が、足音が、希美のことがみんな大好きで一番なんです。

そんな告白を受けた希美は「みぞれのオーボエが好き」と答えます。
きっと希美はこう答えるのが精いっぱいだったと僕は思います。支え役になるといいましたがきっと内心では割り切れない気持ちもあったんだと思います。
だからみぞれに対しての好きの答えは「オーボエの演奏」だけだった…。

でも二人の関係は大きく変わりました。

最後は、二人仲良く並んで帰路に着くのです。そう、ようやく二人は対等の立場に成れたのでした。

この作品はきっと観る人によって感想が本当に違ったものになるんじゃないかな~と思える作品です。そして何度も観たくなる、そんな作品です。ぜひこの切ない物語を劇場で。

公式サイト:『リズと青い鳥』公式サイト
(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

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