中国の小説を原作として、90年代には「週刊少年ジャンプ」にて漫画が連載された『 封神演義 』。漫画版の作者は藤崎竜先生。
1999年にはTVアニメ『仙界伝 封神演義』が放送されましたが、こちらはエピソードの途中までしか描かれず、終盤はオリジナルの展開となりました。
あれから20年近い時を経て、新たに『覇穹 封神演義』となってアニメ化。今作では、ファンの間でも人気の高い「仙界大戦」編を中心に描かれました。
今回は感想コラムのラストということで、『覇穹 封神演義』とはどういう作品だったのか、そして初見さん向けの補足まで行っていこうと思います。
尺が少なかった
『覇穹 封神演義』は2クール作品です。深夜アニメにおいて2クールとは、少ない尺とは言えない長さです。
けれど、原作となるフジリュー版『封神演義』は全23巻です。それを全23話のアニメで描くとなると、やっぱり尺が足りないかなぁとなってしまうのは、仕方ないのことだと思います。
アニメ序盤は重要なエピソードだけを描き、いくつかの章はカット。
『覇穹 封神演義』のメインとなる、「仙界大戦編」を中心に描くという構成になっていました。
「仙界大戦編」は漫画13~17巻(完全版・文庫版は別)です。ここを描くだけでも、そこらのアニメなら2クール使ってしまいそうな量です。
しかしアニメでは全23巻の流れも入れているので、相当数削らなければいけないことになります。
受け取り方はあなた次第

ファンの中には、好きなシーン・エピソード・キャラを削られ悲しく思った方もいると思います。
一方で、聞仲や十天君が活躍する「仙界大戦」編に力を入れてくれたので、この辺りのキャラクターのファンなら、観たかったシーンがアニメで観られてよかったと思う方もいるのではないでしょうか。
一部十天君のシーンにて、原作以上の描写をしてくれた戦いもありました。
それでも、伏線も張り巡らされている作品です。やはり、カットによる影響も大きかったのだと思います。
しかし、それも考え方次第です。
「アニメにならなかった話がアニメになった」「グッズ化やゲームの配信にもなった」「作品を知るきっかけになった」など、新アニメ化によって原作ファンを喜ばせた要素も多々あると思います。ファンであればあるほど「良かった点」「悪かった点」いろいろ考えてしまうとは思いますが、せっかくの新アニメです。なんだかんだで楽しかったと、思えたら一番ですよね。
実際、2クールという少ない尺の中で、名シーンをチョイスしてみたり、なんとかエピローグにつなげてみたり、構成も考えられていたと思います。
とはいえ、それをどうとらえるのかは、皆さんの自由です。
なので、この感想コラムのラストでは、初見さん向けに「描かれなかった部分」の解説で締めていこうと思います。
ジョカのその後
人間界を荒らす妲己を倒すための、封神計画。としてはじまった物語。
計画の真の目的は、歴史の道標ことジョカを倒すことにありました。
ジョカは故郷を失った異星人であり、地球を故郷そっくりにするべく動き始めます。
人間に力を与えたり、なにかをするよう促したり、または破壊したり。
そうして歴史を何度も創り、壊し、創り、故郷に近づけるべくループさせてきたジョカ。
そんなジョカを危険視した彼女の仲間たちは、ジョカを封印しました。
そして、いつか復活するジョカを倒すための道具――スーパー宝貝を残しました。
けれどジョカは魂魄だけで動き回り、妲己などと接触。
物語の終盤、「仙界大戦」の後では、そんなジョカとの対決が描かれます。
ちなみに、ジョカを封じた者たちは、1人を残し全員地球と融合。そのことから、彼らは始祖(始まりの人)と呼ばれています。
つまり、ジョカ以外は地球の一部となり、地球を支えているわけですね。
王天君のその後
十天君最強にして、元人間の王天君。アニメでは描かれませんでしたが、彼の3つ目の魂魄は、太公望と一体化します。
妲己三姉妹の一人である胡喜媚との対決で、封神されてしまう太公望。
そんな太公望を救った王天君は、太公望と一体化し伏羲(ふっき)となります。
しかしこれこそが元の姿であり、伏羲とはジョカの仲間の一人でもあったのです。
ジョカは星を消すほどの力を持ち、それに対抗できる伏羲。
伏羲VSジョカでは、もはやスーパー宝貝すら凌駕した、とんでもない威力の宝貝が行き交う超インフレバトルへ。聞仲以上のパワーを持つキャラクターも、多数登場。
大乱戦となります。熱いです。
紂王のその後
妲己によって化物にされてしまった紂王は、周軍&太公望側の仙人たちと戦闘。
しかし、自分の兵すら傷つけ、味方からも化物扱いされた紂王は、自身に王としての自覚がないことを悟り戦意を喪失させます。
最後は黄天化に戦いを挑まれ、戦死。
その黄天化も一般兵に刺されて死ぬという、悲しい結末へ。
妲己のその後
人間界・仙人界を支配しようとしていた妲己。しかし、彼女はジョカと出会い、ジョカの仲間たちが大地と融合したことを知り、自分の小ささを思い知らされました。
そんな妲己の目的は、ジョカの思い描く世界のため、歴史を操作していく――と思わせ、スキを突いてジョカの身体を乗っ取ること。
それに成功した妲己は、ジョカの仲間たちと同じく地球と融合し、太公望(伏羲)を助けます。
結局、悪いやつだったのか、そうじゃないのか、微妙な存在です。まあ、彼女に殺された人間もたくさんいるわけですけど。
覇穹 封神演義 を時系列順にまとめると

・ジョカたちが地球へ
・ジョカは封印され、仲間たちは地球と融合
・しかしジョカは魂魄の状態で好き勝手に動き、歴史を繰り返す
↓
・残ったジョカの仲間である伏羲、元始天尊たちと接触し、封神計画スタート
・伏羲の魂魄は二つにわかれ、太公望と王天君に
↓
・いろいろあって、太公望は良き人間界をつくるため頑張る
・人間界のため、異なる考えを持つ聞仲とぶつかる(仙界大戦)
・仙人界崩壊
↓
・周軍の勝利、紂王が戦死し人間界がかわる
↓
・妲己三姉妹、ジョカの待つ最終決戦の場へ
・太公望と王天君、一つになり伏羲に戻る
・ジョカ完全復活、妲己が地球と融合
・元始天尊は封神台を開放、死んだみんなが復活
・伏羲はみんなのパワーを借りて、ジョカを倒す
そしてアニメにもあったエピローグへという感じです。
まあ、この辺りは漫画で確認してください。
最後に

なにはともあれ、「仙界大戦」がアニメで観られて、筆者は楽しかったです。欲を言えば、4クールくらい使ってジョカ編までちゃんと観たかったなぁ、とも思います。が、大人の事情もあることでしょう。
スタッフの皆さんだって、2クールという尺の中でどうアニメをまとめるか、苦労されたと思います。
お疲れ様でした。
そして、初見の方はぜひ漫画を読んでみてください。
ジョカ編の勢いあるバトル、面白いですよ!
というわけで、半年続いた『覇穹 封神演義』の感想コラムもこれで終了となります。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。