新人アニメーター育成事業『 あにめたまご 』から見るアニメ業界

新人アニメーター育成事業『あにめたまご』から見るアニメ業界

TVアニメーション。いまや24時間、365日アニメを楽しめる時代になりました。そのジャンルは実に多彩で、男性向けや女性向け、日常系やバトル系、ラブコメにホラー、そこからさらに枝分かれし、幾千もの作品、カテゴリーが世に送り出されてきました。

その豊富な作品ひとつひとつは、どれも洗練され非常に高いクオリティで、私たちを感動させてくれます。

日本アニメのクオリティは世界でも評価され、『ジャパ二メーション』という言葉で評価される事もあります。

そんな高いクオリティのアニメを生み出しているのは、制作会社と呼ばれる、アニメーション制作を業務としている会社です。

しかし、その制作会社が今、社会的な問題を抱えているとして注目を集めています。

それが【労働環境の過酷さ】です。

特に、アニメ制作業界の入り口ともいえる『制作進行』『アニメーター』は、この過酷さが如実に現れ、業界離れが非常に多く、人手不足の深刻さが浮き彫りとなっています。

今回は、そんなアニメ制作の『アニメーター』に注目し、その過酷さや課題を改善する為に始められたプロジェクト『新人アニメーター育成事業』、通称『あにめたまご』についてご紹介していきます。

過酷なアニメーターの仕事

皆さんが普段何気なく観ているであろうアニメ。ファンが胸躍るような面白い作品が次々と世に放たれ、毎日目まぐるしく情報が飛び交い、更新されていきます。

しかし、アニメ制作がとてつもない労力と人手の上に成り立っているという事を知っている方は、いったいどれ程いるのでしょうか?

この中でも、『アニメーター』と呼ばれる、アニメ制作の要である『原画・動画』に関わる、いわゆる「作画を担う」人たちの労働環境は、非常に過酷な現場として知られています。

まずはこのアニメーターの仕事についてみていきましょう。

アニメーターの仕事

アニメーターとは、アニメーションの根幹を成す『作画』を担うポジションを担当する人たちです。
このアニメーターの中にも種類があります。

・原画・・・アニメーションのポイントとなる絵を描く工程です。一般的に原画マンと呼ばれ、出来上がった絵コンテと呼ばれるアニメの設計図から、原画を起こしていきます。絵コンテからアニメへと昇華する為の重要なセクションであり、原画を担当するのは作画経験を十分に積んだアニメーターです。制作会社によっては原画を担当するには、作画監督や監督の実施するテストを通過しなければならない。といったところもあります。

・動画・・・アニメーションにおいて、原画マンが仕上げた原画の間を繋ぐような絵を描き、コマだった絵に動きを加える工程です。一般的には動画マンと呼ばれ、大抵の制作会社の場合、アニメーターは動画からスタートします。前記した原画に動きを加える工程、いわゆる『中割り』以外にも、ラフ原画を仕上げるクリーンナップ作業も担当します。

昇格先

・作画監督・・・アニメーションの作画を統一する為、原画マンが仕上げた作画をチェックする、各話数毎の作画工程責任者ともいえます。大体アニメ1話に対し1人の作画監督が立ちます。原画マンが一定のキャリアと実力を評価されると、この作画監督に昇格します。

・動画検査・・・仕上がった動画のチェックを担当しているポジションです。主に加えられた動画がキチンと仕上がっているかをチェックします。このポジションもアニメ制作においては非常に重要で、動画にした際に絵が崩れる、溶けるといったことがないのは、動画検査の方のおかげといっても過言ではありません。

・総作画監督・・・1話毎の作画統一を作監が行うならば、総作監はアニメ全体の作画を統一する為のポジションです。作監毎の微妙な作画のバラつきを整え、アニメ全体の作画クオリティを維持する非常に責任のあるポジションです。大抵アニメ1作に1人が担当し、キャラクターデザインと兼任して担当している事が多いです。これはアニメーションの肝であるキャラの作画を細部まで統一させる為です。

・キャラクターデザイン・・・もともとは漫画やライトノベルといった平面的なキャラクターをアニメの絵に昇華させたり、監督などが思い描く想像の中のキャラクターを実際の絵に描き起こす人です。アニメーターの目指すべき最高到達点であるともいえ、総作監と兼任している事が多いです。原作ものの場合は全てのアニメーターが書きやすいようなアニメキャラをデザインすることが求められますし、オリジナル作品となれば、登場するキャラクターの全てを描き起こすことになります。非常に研ぎ澄まされたスキルと経験が必要になり、その他にもキャラクターを描き出すという想像力や才能も重要です。

大きな括りでのアニメーターは上記のポジションです。今回問題となっているのは、動画、原画を担当しているアニメーターです。

そもそも、アニメーターの多くはフリーランスとして働いており、その収入は大体が出来高払いです。

動画・原画1枚○○円という形態が多く。その為、若いうちに多くの収入を得るのは、なかなか難しいのが現状です。

さらに、社会現象を巻き起こすような覇権アニメを作り出したとしても、大抵アニメーターのもとへ還元される事は稀で、報酬が変わらない事がほとんどです。

覚悟を決めて業界に飛び込んでも、その過酷さから体調を崩したり、収入が足りずに業界を離れる事に繋がっているといえます。

結果、若い世代のアニメーター離れによって業界自体が逼迫し、そのしわ寄せは各セクションに伝わり、最終的に、制作進行の胃に穴を穿つ事になるのです・・・。

今このような事態になってしまった要因として考えられる事とは・・・。

①今のアニメ放映状況を鑑みると察しがつくと思いますが、昔よりも制作されるアニメの本数が著しく増加したこと。

②さらに、世間のアニメを観る目も肥え、非常に洗練されたクオリティが常に求められるようになりました。

今は僅かでも作画が崩れたり違和感のある絵が観えると、作品名などは一発で拡散され、最悪「作画崩壊アニメ」などと銘打たれ、動画サイトで晒し上げられるといった目も当てられないような時代になってしまいました。

吊るし上げのようなのは憚られますが、作品のクオリティを磨く、視聴者とクリエイターの関係性は確かに素晴らしいものにも思えます。

ですが、これが結果として工数、リテイクの増加に繋がるのは否定できません。

これはつまり、余裕のある工数が取れない状況である事が一番の問題です。

そんな環境の弊害のような形で、有能なアニメーターが育つ前に、現場・業界から離れてしまう事態が起こっているようです。

特に問題視されているのは、若手アニメーターの深夜までかかるような長時間労働。それから苛酷な環境に到底見合わない超薄な収入です。

アニメ業界の人材不足は、アニメファンならば一度は耳にした事があると思います。

昨今のアニメ業界は、若手アニメーターの人材不足、過酷な労働環境による若手離れと、業界参入への危惧を招き、その結果として、現場ではアニメーターの高齢化と若手不足が深刻な問題となっています。

改善事業となるか注目。新人アニメーター育成事業『あにめたまご』

新人アニメーター育成事業『 あにめたまご 』から見るアニメ業界

そんな危機的な業界の改善と、アニメーターの労働環境を変える為、適切で整った環境で若手アニメーターを育て、日本アニメーションのクオリティ維持、進化を目的として始められたのが、「若手アニメーター育成プロジェクト」なのです。

2018年現在、文化庁から委託を受けた日本動画協会が実施している事業で、そもそもの目的は、日本における文化芸術の振興というところにあります。

この『文化芸術』に、メディア芸術の1つとして日本のアニメーション制作も含まれ、この時に問題となっていた、アニメ業界の人材育成プロジェクトとして始まったのが、この『若手アニメーター育成プロジェクト』、通称『あにめたまご』です。

このプロジェクトの中身は、文字通り「若手アニメーターの育成」です。具体的には、将来活躍を志す若手のアニメーターに、実際のアニメ制作を通して、技術の習得をしてもらおう!という、いわゆるOJT(現任訓練)のことです。

もっと噛み砕くと、カツカツのスケジュールのなかで精神すり減らしながら仕事を覚えているようでは、人材育成がまともに出来る筈もない!という事です。

まずは余裕のある工数と、適切な教育環境の下で、若手アニメーターを育てる事が大前提です。

では、現任訓練とはどういうことなのでしょうか?

オリジナルアニメーションの制作が課題

このプロジェクトがOJTの舞台としているのは、オリジナルアニメーションの制作です。

実際に商業用のオリジナルアニメーションを、余裕のある工数と十分な予算で制作する事によって、若手アニメーターへ、作監や先輩からの教育の場を設けると共に、アニメ業界全体、また制作会社自体が新人育成のノウハウを勉強できるという魅力があります。

さらに、このプロジェクトには他にも目的があり、その1つに制作会社の『脱下請化』というものがあります。

そもそも『アニメ制作の下請け』とは、1つのアニメ作品を、丸々制作している元請の制作会社が、工数や人員といった問題から、一部の話数だけ別の制作会社に依頼したりする事があります。

このときに制作を依頼された側の制作会社を下請け、もしくはグロス請けといいます。

この下請けが主である制作会社にオリジナルアニメーションを製作する機会を作ること、会社全体でオリジナル作品を作るノウハウを得る事ができます。

あにめたまごでは、この機会も非常に重要視しています。

また、この制作経験を通して、法的にも正常で、働くスタッフにも無理の無い制作工程の管理、工程事故などがあった場合の適切な処理、対応の仕方を学べるなど、アニメーター以外にも非常にメリットのあるプロジェクトです。

このプロジェクトに参加できる制作会社にはいくつか条件が設けられています。
次の項目で詳しく見ていきましょう。

あにめたまごの応募条件

3年以内程度の原画マン経験を有しており、中堅以上への成長を志す若手アニメーター(原画マンとして十分な技能を有するアニメーターに成長させる)

1年未満程度の動画マン経験を有する新人アニメーター(動画マンとして十分な技能を有するアニメーターに成長させる)

これ以外にも若手アニメーターの定義として以下の2つが提示されており、実質的な限定条件となっている。

原画マン経験6か月~3年以内程度で、かつ応募時30歳以下であるアニメーター

原画マン経験6か月未満だが、育成担当の作画監督の強い推薦があり、かつ応募時27歳以下であるアニメーター

これ以外に主だったもので、下記のような契約条件・契約基準が提示された。

制作するアニメーションは、監督が創作の主体であるオリジナル作品に限る。

監督が書いた脚本などであること(制作会社との共著は可)。マンガ原作・過去に制作されたアニメの続編は不可。小説や民話原作は個別に条件あり。

⑦キャラクターデザインも、既存の挿絵・イラストは不可。アニメーターのオリジナルデザインであることキャラクターデザイナーはアニメーターであることなどの条件が付された。

民放フォーマット(OP+ED=3分、本編20分30秒、合計23分30秒)、総カット数380カット前後、総動画枚数11,000枚前後(いずれもOP,ED分を含む)で制作すること。

テレビシリーズ以上劇場版未満の、出来の良いテレビスペシャル程度を想定しているとされている。

⑩制作は、動画・仕上げを含め日本国内で処理されること。すなわちメイドインジャパンであること。
国の予算を使っているからである。事業目的からみても、日本国内で人材が育たないと意味がない。再委託(孫請け)に出す場合も、日本国内の制作会社でなければならない。

事業年度末(通常は募集された年の翌年2月)に予定される試写会までに完成させること。また、個々のスケジュールを厳守すること。
制作したアニメーションの著作権などは、制作会社に帰属する(ただし、ちゃんとプロジェクトを無事完了させることが条件となっている)。

パッケージ販売、テレビ放映、ネット配信、グッズ制作許可や続編制作などが、制作会社の判断で行うことができる。ただし、これら商業展開で収入が生じた場合は、制作予算額の半額程度になるまで、その収益のいくらかをJAniCAに上納しなければならないとされている。
また、監督、キャラクターデザイナー、作画監督などへの二次配当権を、制作会社と各スタッフ間で別途契約設定することも求めている。

JAniCAが行う講座(Off-JT)へのアニメーター参加協力義務。

監督以外の原画工程スタッフの、約3か月間のプロジェクト専念義務。この期間中は、他のアニメ制作に関わってはいけない。
人材育成が目的であるので、兼務してしまっては効果的なOJTが望めない。
監督は、特に第一線級となると数年先までのスケジュールが既に埋まっているなど極めて多忙であることが多いため、専念義務は課せられていない。

原画ギャラへのランク制の導入。
原画マンの報酬は、カット1枚いくらの歩合制であるが、ほとんどの場合、そのカットの難易度に関わらず報酬額は一定である。このプロジェクトでは、カットの難易度に応じてカット単価に3~5段階のランクを設定し報酬額に差を設けることとしている
事務局は制作される作品の内容や事業終了後の展開に関する干渉は、原則として一切行わない。
その他、各種調査への協力や報告書などの提出義務が課せられている。

制作予算

制作会社には、1社当たり総額3,800万円の制作予算が支給される。もし制作実費が3,800万円を超えた場合は、制作会社の持ち出しとなる。

制作予算は、一般的なテレビアニメ1話あたりで1,000万~1,200万円、テレビスペシャルで2,000万~3,000万円とされているので、それらと比すると潤沢な予算ともいえるが、この制作予算にはアニメ作画制作にかかる予算だけではなく、企画・音響制作・声優のギャラ・広告宣伝などの費用を含んでいることに留意しなければならない。また、予算の一部はその用途が定められている。

作画監督などには、若手アニメーター指導料が別立てで報酬計上されているのが、一般のアニメ制作予算にはない特徴である。これは、本来作画監督と育成指導は別の業務であることと、指導料を別立てにすることにより指導もちゃんとした「業務」であるという意識を明確に持ってもらうためである。

引用:ウィキペディアの執筆者,2018,「若手アニメーター育成プロジェクト」『ウィキペディア日本語版』,(2018年6月25日取得,https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E8%8B%A5%E6%89%8B%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E8%82%B2%E6%88%90%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88&oldid=69009872).

以上のような応募資格が存在し、これをクリアした制作会社のみがプロジェクトの参加を認められることになります。

新人アニメーター育成事業『 あにめたまご 』のまとめ

長くなりましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。アニメ業界は日々進歩を続け、クオリティは確実に世界でも最高峰であることは間違いありません。

アニメ業界で若手の育成を推進する事業も始まりましたし、制作会社が独自に業務形態の改善に取り組んでいるような会社もあります。

しかしながら、未だに過酷な仕事であることには変わりありません。今後益々業界の活性化と改善が進み、新しい人材とアニメ業界を背負うようなキーマンが誕生してくれたら嬉しいです。

アニメーターは簡単な仕事ではありませんし、努力も必要ですが、アニメーターになりたいと考えている人は少なくありません。

そんな未来ある人たちの為に業界が変わっていってくれる様、今後ともアニメを観るだけでなく、制作している業界を応援していけたらいいですね。

あにめたまご:https://animetamago.jp/

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ABOUTこの記事をかいた人

「僕はね、アニメライターになりたかったんだ・・・」 てなわけで、どうも初めまして。好きな桜は丹下桜でお馴染みの『Mr.BOSS』で御座います。 声優関連、アニメ関連の記事をメインに執筆して参ります。 主に声優さんの知識がキモいぐらい詰まっている人間ですので、せめて世の中の役に立つ様に記事を書いて参りたいと思います。 冗談はさておき、アニメなどのサブカルチャーは、今後日本だけで無く世界に誇れる文化になると確信しております。その役に立てる様に微力ながら活動して参りたいと思います。