メガロボクス

熱血アニメ列伝その36 約束どおり来てやったぜ……あんたのリングに!『 メガロボクス 』

暑い暑いと言ってたのが、ついこの前だと思っていたのに、すっかり冬の季節になってきましたね。朝晩の寒さが堪える今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

シンフォギアシリーズの、4連作が何とか終了して、また今回からはいつもの、あすかさん(この『熱血アニメ列伝』の筆者です)セレクトの熱いアニメをガンガン紹介していきます。

そんな久しぶりのテンションで今回紹介するアニメは『メガロボクス』です!

不朽の名作ボクシング漫画・アニメと謳われた『あしたのジョー』の連載開始50周年を記念して作られた本作。『あしたのジョー』が連載、更にアニメ化してからも随分と時が経った現代に生まれた今作は、原案に負けない熱さを十分に有した素晴らしい作品!

まずは、いつもの通りあらすじから。前に5!後ろに5!!

俺はもう負けねえよ……勇利とやるまで絶対な……!『 メガロボクス 』のあらすじ

近未来。主人公「ジャンクドッグ」は地下における違法の地下闘技場で行われている「メガロボクス」の選手。

「メガロボクス」とは、「ギア」と呼ばれる、部分的なパワードスーツのようなマシーンを装着して戦う、進化したボクシングとも言うべき競技のこと。

「ジャンクドッグ」は、あくまで地下闘技場でのリングネームで、彼は自らの名すら実は知らないほどの、「未認可地区」の住人です。市民IDも持たない、国民としても認められていない、そんな「ジャンクドッグ」。

しかし、彼はほとんどガラクタ同然のギアをつけながら、本気を出せば、地下闘技場においては敵がいない程の実力の持ち主。

その為、八百長試合をする事で、その日の身銭を稼ぐような「現在(いま)」に、どこか苛立っているような日々を送っていました。

ところが、偶然メガロボクス(表舞台の正式に認められている方の)のチャンピオン「勇利(ゆうり)」と出会ったことで、彼の運命が大きく変わっていきます。

勇利は、ジャンクドッグと戦う為に、わざわざ地下闘技場に乗り込んできて、そのチャンピオンとしての力を発揮。しかし、ジャンクドッグはその勇利を本気にさせるほどの実力を、その場にいた観客達にも見せつけます。

ジャンクドッグは、この一戦で1ラウンド、僅か3分の中でノックダウンされ、負けてしまいますが。その事で彼は目指すことになります。

チャンピオン、勇利が待つ、メガロボクスの世界大会「メガロニア」の決勝にまで、自らを登りつめさせる事を!

しかし、地下闘技場では通用したガラクタ同然のギアでは、戦いが難しい事は必至。

更に、市民IDを持たないジャンクドッグは、まずそのIDを手に入れなければなりません。

ジャンクドッグの運命共同体とも言える、「南部贋作(なんぶがんさく)」(トレーナー兼コーチのような役割ですが、自らの借金の為に、ジャンクドッグに八百長試合を組ませるような男でもあります)の諸々の取引によって、まずは市民IDを手に入れます。

そして、その際に付けられた、ジャンクドッグの新しい名前こそ……!

「ジョー」

だったのです。

そして、メガロニアへ行く為に、必須と言える高性能のギアを手に入れる為に画策するジョーと南部でしたが、一度高性能のギアを手に入れるものの、おしゃかにしてしまいます。

その際に、南部がひらめいた作戦。それが……!

「ギアレス」

つまり、ギアをつけないで、メガロボクスの試合に出場することでした。

ギアによって、強化されたパンチ力、スピードは、同じくギアをつけた者にしか対抗出来ないと思われている常識を、その自身の身体能力の高さで覆す、その名も

「ギアレスジョー」!!

この名前で、ジョーはリングに立ち、そしてデビュー戦を見事ギア無しで勝利。

勇利までたどり着く為、たった三ヶ月の、ジョーと南部、そして途中知り合ってジョー達と運命を共にする事となった「サチオ」の三人で結成された「チーム番外地」の無謀な挑戦が始まったのでした!

近未来のSF作品と思いきや……?泥臭い世界観が熱い!

メガロボクス
画像引用元:©高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト

『メガロボクス』のあらすじ、いかがだったでしょうか?

序盤でも書きましたが、この作品は不朽の名作と言われている『あしたのジョー』を、原案として作られたものです。

特に、原案と何か設定を同じにしていたり、続編、という訳ではありませんが、見ている人で『あしたのジョー』を見た事があった場合は

「なるほど、この作品は『あしたのジョー』のスピリッツが継承されているな」

と考えずにはいられない程、旧作へのリスペクトや旧作で描かれていた「男の生き様」と言ったような、熱い魂の描写を感じる人は多々いると思います。

それは、「ギアレスジョー」と言った、あえて不利な状況を自らに課して、それを寧ろ戦いのアドバンテージにしてしまうような、本作の「ジョー」のメガロボクスにかける熱い思いなどにも垣間見えます。

しかし、個人的には、この作品が『あしたのジョー』の魂を一番引き継いでいる部分、それは。

「近未来の筈なのにまるで戦後すぐの日本」

のような、世界設定にあると思っています。

あらすじにも書いた通り、この作品の設定年代は「近未来」です。現代では、ボクシングで使えるような身体を強化する装置「ギア」は実用化していません。

しかし、作品を見ていると……「まるで、これは『あしたのジョー』の舞台の時代のようだな」と思える箇所がいくつも見えてきます。

『あしたのジョー』は、連載開始当時は、まだ第二次世界大戦の爪あとが残っているような時代でした。人々はまだまだ生活が豊かとは言えず、貧乏な人はとことん貧乏でその日食べるのにも困るような人も多数いる、そんな時代背景が作品の中に垣間見えました。

『メガロボクス』は、近未来の設定にあって、明言は避けていますが、いくつか、あえてこの『あしたのジョー』での時代背景に似せてみえるような部分が垣間見えます。

例えば……。

  • 比較的近い過去に、大きな戦争があって日本が関わっていて、出兵している人間がいる
  • 正式な「メガロボクス」の選手たち(およびその関係者)は摩天楼聳え立つ、まさに近未来そのままの大都会に住んでいるような人々であるが、ジョー達のような人間はほとんどスラムのような街、かつ生活水準も極めて低そう

と言ったような描写が、特に「近未来の設定ながらまるで戦後すぐの貧しい時代」のように見える設定に思えます。

そんな、ある意味泥臭い世界の中で生きる「ジョー」達。

彼らが「メガロボクス」という華やかで世界が注目している、文字通りの「表舞台」の「てっぺん」を目指し、あがいているからこそ、見ている者が熱いモノを感じるのではないか、と筆者は思うのです。

ライバル「勇利」のジョーに対する思いで取った「ある行動」が激熱!

前項で、この作品の設定的な熱さを語りましたが。キャラクター的には、当然主人公「ジャンクドッグ=ジョー」のハングリーさから来る熱さを感じる良いキャラクターではあるのですが。

ライバルであり、「メガロボクス」の現世界チャンピオンである「勇利」が、物語終盤で取る、ある行動が本当に熱いのです!

と、言ってもその「ある行動」がどんなものかを書いてしまうと、かなりのネタバレになってしまうので、詳細はあえて書きません。

しかし、ちょっとだけヒント的なお話を。……「メガロボクス」には、現代のボクシングのような「体重による階級」制がありません。つまり、全ての試合が「無差別級」な訳です。

ところで、旧作『あしたのジョー』における、主人公「矢吹丈(やぶきじょう)」の最大のライバル「力石徹(りきいしとおる)」を、このコラムを読んでいる方々はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

漫画やアニメにおける「ライバルキャラ」の中で、彼ほどの苛烈な印象を、見ている者に与えたキャラクターはそうはいないでしょう。

それは何と言っても、「主人公矢吹丈の階級まで自ら下げる為に、過酷な減量を行った」部分にあると言えます。それによる結果に、衝撃を受けた当時の青年達の様々な言動が今でも語り継がれているほどです。

さて、先ほど書いた通り「メガロボクス」は「無差別級」です。つまり、戦うのに減量というものは基本的に必要がありません。

しかし、この『メガロボクス』において、ライバル「勇利」は、旧作における「力石徹」の過酷な減量に該当する、とてつもない行動を取る訳です。

ヒントは、ここまで。(想像出来てしまう人は多いかもしれませんが……)実際の勇利の行動に関しては、是非本編を見てください。

インスパイアは『あしたのジョー』だけではない?主人公ジョーに見えるとある選手の姿

メガロボクス
画像引用元:©高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト

『メガロボクス』の熱さを、色々と語っていきましたが、いかがだったでしょうか?

この『メガロボクス』、13話と短く、各種配信サイトでも気軽に見られる作品なので、是非このコラムを読んでくださった方には、実際に見て欲しいと筆者は思います。

最後に、ちょっと妄想入ってるかも?な主人公ジョーのキャラクター造形について、ちょっとだけ語ります。

この『メガロボクス』の主人公「ギアレスジョー」のビジュアルを初めて見た時に、多分そんなには思い浮かべる人はいないであろう、とある実在のボクシング選手を筆者は思い浮かべました。

その選手とは……「カシアス内藤」さん。

実際に彼の試合を見た訳ではありませんが。このコラムの筆者あすかさんの好きな作家さんに「沢木耕太郎」さんと言う方がいらっしゃいます。

(あにぶで沢木さんの事を書く人は多分、そうはいないでしょう(笑))

バックパッカー(世界をバックパック1つでなるべく安く旅行する人達の総称)のバイブルと言われている『深夜特急』の著者として有名な、沢木さんの代表作の1つに『一瞬の夏』という作品があります。

この『一瞬の夏』は、先述した「カシアス内藤」さんが一度リングを降りた後に、再びボクサーとして世界チャンピオンを目指す様を描いたノンフィクション作品です。

この作品の中では、沢木さん自身も深くカシアスさんの復活に関わる(プロモート的な部分などにも協力)事で単なるルポルタージュではなく、沢木さん自身の視点を含む小説のような部分も多々あります。

個人的には無茶苦茶「熱い」と思ってる活字作品のひとつです。

先ほども述べたとおり、筆者はその「カシアス内藤」選手の実際の試合を見たりした事はありません。

しかし、その選手当時の風貌は、いくつか写真を拝見していて、この『メガロボクス』の主人公「ジャンクドッグ=ジョー」のキャラクターデザイン、特に髪型を初めて見た時に

「もしかして……カシアス内藤さんが少しイメージに入っているのでは?」

と思ったりもしたのでした。

『一瞬の夏』も、かなり旧作の『あしたのジョー』は意識して作られているように思える作品ですし、『メガロボクス』の制作スタッフが、『一瞬の夏』を読んでいてもおかしくはない、と個人的には思っていて。

こんな妄想をしてしまったのでした。全然違う可能性も高いので、話半分でこの部分は読んで下さい(笑)。

とにかく、色々と熱い部分の多いこの『メガロボクス』、是非是非実際に見て、ジョー達の熱い生き様を堪能してくださると嬉しい限りです。

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