2016年1月から放送されたアニメ「灰と幻想のグリムガル」。異世界ファンタジーでは異色の作風ながら、視聴者の胸を打つ本作の魅力をお伝えしたいと思います。
このページの目次
異世界もの作品のなかでは異質の、リアル志向のシリアスな作風!
最近は異世界もののアニメがたくさん放送されていますよね。異世界を辛い現実とは違う楽園のように描き、チート主人公などをメインにして、爽快感重視でストレスの少ない雰囲気の作品も多いですよね。
本作も異世界ファンタジー作品ではあるのですが、主人公・ハルヒロたちははじめから特別な能力をもっていません。異世界「グリムガル」で、最弱のゴブリン一匹すらまともに倒せず苦労しています。
ハルヒロのパーティーメンバーで、暗黒騎士のランタ、神官のマナト、戦士のモグゾー、狩人のユメ、魔法使いのシホル、さらに途中からパーティーに加入することになるメリイ。みんな特別な能力はもっていません。
それでもみんなで努力して新しい技を覚えたり、パーティーの連携を強めることで、少しずつですが成長していきます。その過程がとても丁寧に描かれていて、他の作品にはない魅力になっていると思います。
実際のところ異世界ものにリアリティーを求めても、正解なんて分かりません。ただハルヒロたちの生活や戦いの日々を見守っていると、異世界で生きるってこういうことなのかな、という不思議な説得力やリアリティーを感じるんですよね。

生きることを考えさせられる、深い物語に涙!
グリムガルの世界では「死」というものがとても身近にあって、作品の大きなテーマにもなっています。ハルヒロたちは戦いのなかで「死」を強く意識します。
敵の命を奪うことに後ろめたさや抵抗感を抱えながらも、自分たちが生きていくために戦い続けるハルヒロたちの姿には考えさせられるものがあります。私たちも現実世界で生きていくために時に誰かを傷つけたり、逆に傷つけられたりしていますよね。
そういう私たちの日常を異世界という鏡を通して見ると、生きていくって辛いこともたくさんあるけれど、それでも多分生きていくってこういうことなんだろうなと気付かされる場面が多くあります。
若干ネタバレになってしまうかもですが、ハルヒロたちに序盤でかなりショッキングな出来事が起こります。その時の演出や、キャラクターの心の動き・葛藤は見ていて本当に辛いのですが、その後の展開にとても大切なシーンです。どうか目を背けることなくハルヒロたちの決意を見届けてもらいたいですね。
この作品は一見現実離れした異世界を舞台にしていながら、実は私たちの生活とか人生と地続きになっている部分がたくさんあって、生きていく意味を教えてくれる名作だと思います。

水彩画のような淡く美しい世界と、作品を彩る音楽が染みる……
本作はキャラクターデザインや、背景の独特の画のタッチも特徴的です。水彩画のような淡い世界観に、光の効果が印象的に使われていて、その美しさに思わず息を飲んでしまいます。
OP・EDやアイキャッチのキャラ画がどれも綺麗で、ポスターにして飾っておきたいなと思うくらい美しいです。この画の感じは実写では絶対に表現できない、アニメならではの強みだと思います。
淡いタッチのなかにも細かな描きこみがしっかりされていて、街並みや自然の風景にリアリティを感じます。ハルヒロたちが普段生活している呼吸とか温度とか、何気ないシーンのなかにそういったものが息づいていて、作品世界を魅力的に彩ってくれています。
また本作はOP・ED・挿入歌など作中音楽全般を、クリエイティブ・ユニット「(K)NoW_NAME(ノウネイム)」が手がけています。OPの「Knew day」は物語の始まりを告げる力強い曲調で、EDの「Harvest」はしっとりと余韻に浸らせてくれる落ち着いた曲になっています。どれも名曲ですよ!
新作CD-BOXもぜひ聴いてもらいたい!
2019年1月に発売された新規オーディオドラマと新規楽曲が収録されたCD-BOX はファンなら必聴の内容になっています。オーディオドラマは90分の大ボリューム。気になった方はぜひこちらも聴いてみて下さい。