魔法使いの上位存在として行政に認められた”魔女”が居る世界。史上最年少で魔女の試験に合格し、『灰の魔女』の二つ名を持つ天才少女・イレイナが気ままに一人旅をする様子を、時にはユーモアたっぷりに、時にはシリアスに描いた「魔女の旅々」。
白石定規による小説を原作に、1話完結のオムニバス形式でさまざまなテーマをイレイナの視点から描いたファンタジー作品です。
よく今作と「キノの旅」を比較に挙げられることがありますが、確かに同じオムニバスタイプのロードムービーアニメとしては共通する部分もありますが、個人的には全然違うタイプのアニメだったと感じます。
“魔法使い”を主人公にしたファンタジー要素のあるアニメではありますが、あくまでそれはスパイスであって本質の部分は登場人物たちが織りなす人間臭い部分を、癖の強い主人公・イレイナがズバズバと突っついていくような作品でした。
そんなイレイナの旅も12話を駆け抜けてラストに新キャラが登場しまだまだイレイナの旅は続いてく、という続編の映像化も出来そうな終わり方で終わりましたが、そんな魔女・イレイナの旅を振り返り総括していきたいと思います
魔女・イレイナというキャラクター性

イレイナの旅は上述した通り、グッドで平和な旅もあればバッドで後味の悪い旅もあります。
さまざまな出逢いと別れを繰り返すイレイナの旅は、時には首を突っ込まざるを得ない状況になったり、時には巻き込まれたり、また時にはイレイナが俯瞰してあえて手を出さなかったりと本当に気ままな旅をしています。
ちょっと性格に難ありなんて見方もされるイレイナですが、その高飛車とも取れる性格に裏打ちされた若干15歳で魔法使いの最高位にのぼりつめるほどの努力と才能にあふれる天才・魔女であるこそ、あそこまで自分に正直に生きることができるんです。
彼女を代表する「そう、私です。」というセリフから分かるような、そんな竹を割ったような性格のイレイナの視点でみる彼女の旅や言動も魅力の一つ。
キャラクターとして飾らないかわいいのもさることながら、そのかわいさから毒づいたり、ドヤ顔をしたり、時には15歳とは思えない大人びた表情をしたりとコロコロと変わる表情。
さらには“下衆い”行為でさえも、したたかに行うところ。
時には垣間見せる弱い部分だったり、実はちゃんと優しかったり、旅を通じて人間的に成長している面も作品の面白さの一つだと思います
魔法は便利だけど万能ではない

本作は、魔法が普通に存在する世界を舞台にしたファンタジー作品でありながら決して「魔法が万能なものではない」という点も物語にアクセントを加えている一つ。
まあ魔法で全てを解決できてしまったら物語として破綻してしまうので仕方のない部分はありますが…。
例えば2話ではイレイナはサヤにぶつかった拍子に大切なブリーチを失くしてしまいます。いつ紛失したかわからない状態のブリーチは復元できなかったりと、便利ではあるけど万能ではない絶妙な位置なのが味を出している気がします
もちろん魔法を使ったド派手なバトルの描写や、魔法をつかった映像ならではの描写は目を見張るものがありますが、「魔法では全てが解決できない」という事が、魔法は存在するのに物語のバッドエンドな結末を代えられないという理不尽さや現実感を演出していたりもします。
1話完結のオムニバスの見易さ
今作は基本1話完結のオムニバス形式で物語が進んでいくのですが、それゆえの見易さといいますか、どこから見てもOKで取っつき易い作品というもの、作品としての魅力だと思います。
といっても、最終話はこれまでの旅の積み重ねを包括的に観たストーリーではあるのですが…。
1話の中で、時にはAパートの中だけできっちりと起承転結がうまく起きているので、すごく見やすくなおかつインパクトを与えてくれるストーリーが多いし、時にはすごく考えさせられる物語も多いです。
そしてやはりダークな面も、ほのぼのな面もどちらのふり幅も全力なところがこの作品の最大の特徴であり魅力だと感じます。
アニメだけじゃないメディアミックスの魅力

魔女・イレイナのロードムービーである「魔女の旅々」。「奇跡も魔法もあるんだよ……。でも現実だってそんなに甘くはないんだよ」と言わんばかりの怒涛の展開が1話完結で見れる今作。
美麗な映像に、時には魔法の戦闘描写などアニメならではの魅力もありますが、アニメ化しているエピソード以外にもまだまだおもしろいエピソードはたくさんありますし小説ならではの叙述的な表現などなど、ぜひとも原作小説やコミカライズ、ドラマCDとさまざまなメディアをチェックしてみてほしいと思います!