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小説からでもアニメからでも、何度見ても取り込まれるホラーアニメ「 屍鬼 」

今回ご紹介するホラーアニメ「 屍鬼 」は2010年7月~12月、フジテレビ系列で放映されたホラーアニメです。監督はアミノテツロ。

原作は小野不由美が1998年に発表した同名小説で、第52回日本推理作家協会賞長編部門の候補にもなっていて、とても評価の高い人気ホラー小説です。

2008年に藤崎竜が漫画化し、アニメ版はその漫画をベースに作られています。

また、余談ではありますが、京極夏彦が「どすこい」の中でこの小説をパロディ化した「脂鬼」という短編を書いており、興味のある方はついでに読んでみると、これもまたなかなか味わい深いかもしれません。

ホラーアニメ「 屍鬼 」のストーリー

三方を山に囲まれた僻地の村、外場村。人口わずか1,300人の小さな村は、古くからの因習が根強く残り、現代でも土葬の習慣が残っていました。

よそ者に警戒心の高いこの村に、ある日よそ者一家が越してきて、村はずれの洋館に住み着いた頃から、村の何かが変わりはじめます。

例年になく増え続ける死者に、村唯一の医者である尾崎敏夫は不信感を抱き、親友で寺の副住職を務める室井静信と共に調査を開始します。

しかし、奇妙な出来事は多いのに、たぐってもたぐってもその糸は途中で見えなくなってしまい、二人の間にも意見の相違から対立が生まれたりします。

転校生の結城夏野もいち早く異変に気づき、その流れに抵抗しようとしますが、都会人の両親と、閉鎖的な村人の双方からの無理解に阻まれてしまいます。

誰が見ても不自然と思えるほどに村の死者が増えたころ、夜に亡くなった村人が歩いているのを見かける人が現れて…

残虐性が強いので心の弱い方は絶対見てはいけない。ホラーアニメ『 屍鬼 』

小説の「 屍鬼 」から入ったので、アニメ化に少なからず不安を抱いていたが・・・

わたしは最初、小説から入りました。小説は、上下巻合わせて1000ページを超える大作で、枕になるというか、肩こり製造機というか、寝転がって読んでいてうとうとしたら顔面直撃の凶器になるほどのシロモノ。

しかも登場人物がやたらと多く、前半は何でもない村の日常風景がだらだらと続き、一体いつになったらホラーな展開になるのか!とやきもきしたものです。

しかし一旦コトが始まると、今までの緩慢な流れが一気に奔流となって全てを押し流し、坂道を転げ落ちるような猛スピードの展開に、振り落されないようにしがみついているのがやっと…という状況になります。堕ちる先がどこなのかと、恐怖に震えながら。

怒涛の勢いで小説をラストまで読み終わった後は、しばらく虚脱感でボーっとしていたものです。

そのあと、寡聞にして漫画化されたことは知りませんでしたが、アニメ化されたことを聞いて、多少不安に思いました。絵の無い本で言葉だけで恐怖を煽っていく手法が、絵をつけることによって、また限られた放映時間という枠の中で、ちゃんとした作品として成り立つのだろうかと心配したものです。

しかも、最初に絵を見た時は(漫画版を知らなかったので)、正直言って驚きました。わたしの個人的な意見なので的外れかもしれず申し訳ないのですが、大変粗削りでアクの強い絵柄で、原作を読んだ時のイメージと全然違ったからです。

それでもアニメを見始めているうちに、その絵にも慣れたというか、逆にその特徴的で非現実的な絵柄が、かえってストーリーの異様性を強調しているように思えて、回を重ねるごとに好きになってきました。

ちょっと脱線しますが、あの「ひぐらしのなく頃に」が、あの絵だからこそあれだけ怖かった、というのと同じ感覚かもしれません。

ただ、髪の長い僧侶ってどうよ!という疑問は最後までありましたが…。まぁ、中心キャラが剃髪したイケメンで、しかもシリアスなホラーというのは、絵にした場合、かなりハードルの高いものになってしまうというのはわかりますけれど。

ストーリーは原作に沿ったものだが、登場人物の設定などは一部省略や変更があり。迫り来るカタストロフや恐怖感は、アニメのほうが上手く表現出来ている。

ストーリーはおおむね原作に沿って進んでいきます。小説で多くのページを割いた村の風景や人物描写はかなりコンパクトにまとめられていますが、わかりやすいキャラの描き分けとテンポの良い流れで、カタストロフが始まるころには大体が頭に入っていて、村人のほとんどと知り合いのような気がしてきます。

登場人物の役割など原作と変わった部分もありましたが、アニメの中でわかりやすくするためには必要なことであり、原作ファンとしても充分受け入れられました。

アニメで原作よりも強調して描かれていた部分もなかなか面白かったです。例えば夏野と徹の関係が、見ようによっては微妙にそこはかとない恋愛を思わせるような部分とかは、結構ツボでした。結局最後に徹は国広律子と共に死ぬことを選ぶので、夏野は振られた形になってしまいますが、徹と律子のラストも涙なしには見られなかったです。

また、最重要人物の一人である桐敷沙子の寂しさや哀れさも、アニメの可憐な絵柄のおかげで、よりインパクトがあったと思います。

全体の流れから見て、原作よりもアニメの方が、人間の残酷さと矛盾を浮き彫りにしている感じがして、新たな感動を呼ぶことに成功したと思います。

というわけで、小説からアニメを見て、今度は機会があったらぜひ漫画の方も読んでみたいという気になっています。アニメから入った方も、ちょっと長いですけれど、興味があったら小説にも手を出されることをお勧めします。

お互いに補完しつつ独自の魅力を発揮させているという点で、一粒で二度三度おいしいコンテンツと言えるのではないでしょうか。

最後に、BUCK-TICKの唄った主題歌「くちづけ」も耳に残る印象深い曲ですね。意外と唄いやすいので、カラオケでもお勧めです。

 

アニメの原題:屍鬼
作者/監督:アミノテツロ
主な声優(複数可能):大川透, 興津和幸,悠木碧,内山昂輝,GACKT
製作会社:屍鬼製作委員会(アニプレックス、フジテレビジョン、集英社、電通、ダックスプロダクション)
公式サイト:http://www.okiagari.net/
公開日:2010年7月
上映時間:全22話、各30分

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