後に一大ムーブメントを起こす「 新世紀エヴァンゲリオン 」も、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」と同じような洗礼を受けました。
視聴率は概ね6~8%を推移、最低視聴率に至っては第拾四話の0.3%でした。他の2作品と違って打ち切りにこそならなかったものの、放映当時はぱっとしないスタートでした。
しかしメディアミックス展開などが功を奏して人気が出始めると、それはたちまち燎原の火のように燃え広がり、あらゆるメディアで話題の中心となるに至ります。この作品はその商業的展開でも、内容の構造においてもアニメの転換点となる要素を多く持っていました。
まず、「製作委員会」方式の本格的例として挙げられます。特定の会社がアニメを制作する場合、資金的な制約や失敗した場合の大きな損失といった問題点がありました。そのリスクを分散させるために多くの出資先がその作品限りで参加するのがこの方式であり、現在ではその課題点をさらに改良した方式としてアニメ業界に広まっています。
また、主人公碇シンジをはじめとする内面の葛藤がそのまま世界の命運に直結するという作品世界、いわゆる「セカイ系」という概念を生み出す契機ともなった作品です。
TVアニメ版「 新世紀エヴァンゲリオン 」のストーリー
時に2015年、(もう過ぎてしまいましたね)15年前に起きた大災厄「セカンドインパクト」により人類は人口の半数を失いました。日本の首都は「第2新東京市」に移り、更に新首都として「第3新東京市」が建造中でした。
碇シンジは14歳、別居していた父親、碇ゲンドウから突如として「第3新東京市」に呼び出されますが、指定された「特務機関ネルフ」に向かう途上で謎の存在「使徒」の侵攻に遭遇します。ようやくネルフの司令である父親と再開したシンジでしたが、そこで下された命令は、今見たばかりの人型巨大兵器「エヴァンゲリオン初号機」に搭乗して「使徒」と戦うことでした。突然の命令に当然ながらシンジは拒絶します。
しかし、自分が乗らないと代わりに搭乗することになるという少女の姿を見てシンジは愕然とします。ストレッチャーで運ばれてきた上に全身は包帯だらけ、転がり落ちた彼女を抱き上げたシンジの手には彼女の血がべったりとつきます。これを見てシンジはついに自分が乗ることを決意します。
これがエヴァンゲリオン零号機パイロット、綾波レイとの出会いでした。これから彼らは、次々と襲来する「使徒」と戦う宿命に巻き込まれていくのです。しかし、彼らの知らぬところでは「人類補完計画」という巨大な計画が進められていたのです。使徒とは?エヴァンゲリオンとは?人類補完計画とは?回を重ねるにつれ、謎は解き明かされるどころか深まるばかりなのです。
登場人物の奥行きを持たせるカット割りと演出が秀逸なTVアニメ版「 新世紀エヴァンゲリオン 」。
TV版エヴァンゲリオンは全26話で構成されています。「新劇場版」は時間的制約から、ストーリーとこの世界に秘められた謎を中心とする展開で手一杯の観があります。
しかしTV版では登場人物の日常を描く余裕があります。そこには新劇場版には見られないギャグ要素あり、ラブコメありで、(特にトウジとヒカリのくだりでは、珍しいアスカのギャグ顔が見られます)一見ストーリーとは関係ないディテールでも、それが登場人物の形象に奥行きを持たせるのです。
また、時間をかけなければ描けない心象風景もTV版ならではではないでしょうか。
第四話「雨、逃げ出した後に」ではエヴァの搭乗を拒否したシンジがあてどもなく歩きまわるシーンが何の説明も独白もなしに延々と続くのです。
これを見ての感じ方は人それぞれでしょうが、沈黙と、時間をかけることでしか語れないこともあるのです。このように人物を様々な面から描いていることが、彼らが後半の畳み掛けるような凄絶な展開に巻き込まれていくことを見た際の感情移入につながっているのでしょう。
とかくエヴァは斬新なカット割りやSFギミックに目が奪われがちですが、人物をしっかりと描いていることも長い間支持を受ける要素ではないでしょうか。
題名:「新世紀エヴァンゲリオン」
監督:庵野秀明
出演:声優 緒方恵美、宮村優子、三石琴乃、林原めぐみ 他
制作:テレビ東京、GAINAX
公式サイト:新世紀エヴァンゲリオン(日テレ)
公開日:1995年10月4日~1996年3月27日
上映時間:30分×全26話