中国の雰囲気を楽しむアニメというとなにを思い浮かべますか?「封神演義」「ふしぎ遊戯」「十二国記」「彩雲国物語」などなど様々あると思いますが、架空の国を舞台にした中華風ファンタジーアニメとして発表されたのはこの作品が一番最初ではないかなと思います。
1989年に日本ファンタジーノベル大賞を受賞した酒見賢一さんのデビュー作「後宮小説」を原作とするテレビアニメ「雲のように風のように」です!
テレビアニメなのに、〇〇がない?
この作品、一時間半のテレビアニメとして制作されたにも拘らず、異例の形式で放送されました。
それは「本編の放送中、一度としてコマーシャルを挟まない」というもの!
そのおかげで筆者、今までこの作品は映画作品だと思い込んでいました。それほどに全編にわたって美術やキャラクター描写が繊細な作品です。
コマーシャルが挟まれないということはアイキャッチもありません。一時間半たっぷり、しっかり作品世界にのめりこめるということです。
テレビアニメであるのになぜコマーシャルを挟まず、一気に放送したのか。この作品に流れる「静かな圧力」を感じると、その理由も分かるような気がします。
隠れて描写される少女たちの「性」
この作品の主人公をはじめ、登場するほとんどのキャラクターが年若い少女たち。彼女たちが目指すのは、架空の国「素乾国(そかんこく)」の第18代皇帝の花嫁。妃に相応しい教養を付けるために後宮で共同生活を送りながら様々なことを学んでいきます。
最初は「思春期の少女が花嫁を目指す」というシンデレラストーリーとして正面から楽しんでもらいたいのですが、その後は是非、隠れた部分を見てみてください。
妃を内包し、いずれ次代皇帝をも産み落とす場所である後宮は「子宮」
宮女候補生たちが最初に通る、暗く長いトンネル「垂戸(たると)」は「膣」
そして月に一度、宮女候補生として失格を言い渡された者が一人ずつ出されるのは「排卵」
例として挙げましたが、他にも主人公「銀河」が初潮を迎えるシーンなどが、意図的に隠されて年少者には理解できない表現が成されています。
古代中国を思わせる世界観と近代武器、そして少女達の性をオブラートに包んで描写することで、なんとも怪しくも惹きつけられる作品になっています。
気になった方は是非原作「後宮小説」にもお目通しを!何度でも違う楽しみ方ができる名作です。