『バジリスク~甲賀忍法帖~』バトル物の始祖を原作にした王道の系譜

この作品はタイトルかも一目で分かるように、忍者の物語だ。
特に創作で甲賀忍者を知る人であれば、なんとなく相手が「あ、伊賀忍者と戦うの?」と想像がつくだろう。
まさにその通り。邦画のヒット作、『陰陽師』の原作者として知られる夢枕獏に「バトル物の始祖」と言わせしめる作品、それを原作としてアニメ化されたのがこの『 バジリスク~甲賀忍法帖~ 』だ。

バジリスク-甲賀忍法帖

廃れることない王道

この作品の原作が連載を開始したのは、1958年の11月からだ。実に60年近く前になる。
そんな作品の、しかも忍者物だ。なんだか古めかしい、または小難しい話のように思われるかもしれない。
しかしその内容は当時かなり奇想天外なものとして話題になった。

なんせ忍者がナメクジに変化したり虫のような姿をしていたり、果ては死なない

今では『NARUTO』などでもよくありそうな設定だが、よく考えてほしい、60年前の作品だ。
そして作品のテーマは『敵対組織の中の愛憎』。
伊賀と甲賀、憎み合う二つの忍び里に生きる若い後継者達の想いを軸に、生死を賭けた戦いが描かれている。

その背景は徳川家の後継ぎ、つまり次期将軍を廻る跡目争いだ。甲賀、そして伊賀の精鋭による殺し合いを賭けの対象とし、賭けに勝ったほうを次期将軍として任命するという。

しかもその争いが徳川家から命じられたのが甲賀の後継者である弦之介、そして伊賀の後継者である朧の祝言を目前に控えた時期だ。

王道中の王道。その礎を築いたのがまさにこの作品と言ってもいい。

多人数vs多人数を描く場合、展開が単調では飽きられてしまう。それを打破するために荒唐無稽なまでに個性をつけ、迫力を増し、人間関係を複雑に組み上げた。それまであった主人公一人による勧善懲悪ではなく、全員とは言わずとも複数の人間に主人公並みのスポットを当ててメリハリをつける。

今ではごく当たり前の王道展開だが、それが王道足り得るのは、ひとえに「純粋な面白さ」を感じることができるからだ。
この作品がなければ恐らく、今の王道作品は色を変えていたはずである。

今では当たり前、メインキャラに一人はいるキャラ付け、いわゆる「綾波系」と言われる綾波レイ(新世紀エヴァンゲリオン)や長門有希(涼宮ハルヒシリーズ)、「ツンデレ」と言われるルイズ(ゼロの使い魔)なども草分け役がいてこそ存在している属性だ。

王道とは大多数が「これイイ!」と思う展開やキャラ付け。それを当たり前に享受することに慣れてはいないだろうか。
お盆休み、この作品を見て王道の面白さに立ち戻るのもまた楽しそうだ。