海賊の種類
アニメに限らずフィクションに頻繁に登場する存在、海賊。だがひとくちに「 海賊 」といっても、その実態は様々だ。
●まず典型的な例は「船舶を使って海上を移動し、武力を行使して略奪行為を行う非合法組織」というものだろう。海の上で活動する盗賊だから、文字通り「海賊」
アニメ『ONE PIECE』に出てくる敵側の海賊などは、だいたいこの分類に属していると言える。
こうした海賊の歴史は古い。いわば船さえ出来てしまえば存在しうるうえに、古代では略奪行為など日常茶飯事だったのだ。その驚異はギリシア神話にも登場するほどである。
そんな組織としての海賊は現在にも残っている。ソマリア海賊などはその典型で、国家による統治と海賊との関係性を如実に表していると言えよう。
特にこのような海賊が特に隆盛を極めたのが、大航海時代の終焉近辺からおよそ100年近い間のことだった。広範化した海路や貨物そのもの高騰化などから、海賊行為を行うものが激増したのである。
●一方、陸上では権力者として存在しているものたちや、略奪ではなく交易を主としていた海賊もいた。
前者は戦国時代などに活躍した日本の「水軍」とも呼ばれるものたち(九鬼水軍や村上水軍など)、後者は中世ヨーロッパを席巻したヴァイキングの一部などが代表例。
両者とも海に利益を求めたという点では共通していて、前者はより大きな勢力に有能な海上戦力として取り込まれたりし(九鬼水軍は織田信長の軍勢に、村上水軍は毛利家の軍勢となった)、後者は行き着いた土地に住処を移して現地住民と同化していくなどした。
ちなみに『十二国記』の主要人物である尚隆は、戦国時代の瀬戸内海にテリトリーを持ち、水軍を擁する一族の一人だった。
●16世紀には『私掠船』と呼ばれるものが登場する。これは国によって「敵国の船への攻撃や略奪を行ってもよい」という免許をもらった船のこと。
厳密には海賊に属するものではないのだが、敵味方構わず略奪したり、後に正式な意味での海賊に転じるものも多く存在した。
もともとは海外進出に出遅れたイギリスが苦肉の策として行ったもので、後に戦争のための戦力増強として、フランスなどの国が続いて採用した。
アニメ『モーレツ宇宙海賊』に登場する『私掠船』も、もともとは不足していた戦力を補うため導入されたものである。
© 2011 笹本祐一/朝日新聞出版・モーレツ宇宙海賊製作委員会