『精霊の守り人』人と人が紡ぐ奇跡を描いた和風ファンタジー

精霊の守り人

日本や、それに準ずるような和風世界観がベースにあるファンタジーは数多い。言ってしまえば、『古事記』や『日本書紀』などの中世前半に書かれた書物たちも、ある種ファンタジックな読み物のひとつと言える。

そんなふうに大昔から日本に根付いている神話世界を交えた世界観のなかで、深みのある人間ドラマを展開させていくのが、この『 精霊の守り人 』だ。

 

和風世界感と、『サグ』『ナユグ』

この作品の特徴のひとつは、日本を土台にしたような世界観とそこに根付く文化を、非常に丁寧に描写しているところにある。
舞台となる国は「新ヨゴ皇国」という皇制国家で、イメージとしては平安期の日本に近い。
ほかにも、各登場人物の役職や服装、建築や小物に至るまで、何かしら“和”を感じさせるものばかりで、我々日本人には親近感のわく世界観となっている。

しかし一方でファンタジーらしい非現実的な要素もある。その最もたる要素が『サグ』と『ナユグ』という二つの世界の存在。
『サグ』は、一言で言うと「人間たちが住んでいる世界」で、もうひとつの『ナユグ』は「精霊たちが住んでいる世界」で、言うなれば『異世界』だ。

 

悪者のいないストーリー

ストーリーは大まかにいうと「皇子・チャグムと新ヨゴ皇国を救う物語」だ。
ひょんなことから宮廷に招かれた女用心棒・バルサが、水妖に卵を産み付けられたため、殺されそうになっている第二皇子・チャグムを、チャグムの母の願いにより、宮廷から連れだし守っていくこととなる。
さらにそこから水妖の卵の秘密が徐々に判明していき、新ヨゴ皇国の存亡を賭けた濃厚な人間ドラマが描かれていくのだ。

ここで重要なのは、この一連の物語の中には悪者が存在しないという所。
チャグムと、彼の中にある「水妖の卵」をめぐり、バルサ達と宮廷の面々は互いに対立することになるのだが、どちらにも私利私欲をむき出しにするものはいない。
むしろ誰もがチャグムと新ヨゴ皇国を愛し、それらを守るために動いているのだ。しかし謎多き卵の存在と誤解が混じり合い、事態は不幸な方向に進んでいってしまう。
それでも皆、必死にもがいていく。チャグムと国にかせられた過酷な運命を、ともに乗り越えようと。

 

『 精霊の守り人 』は、人と人が手を取り合い、助け合って困難に立ち向かっていく様を克明に描いた作品なのだ。
攻殻機動隊 S.A.C』シリーズの神山健治監督とプロダクション.I.Gによる、丁寧な演出・作画も見逃せない。紆余曲折を経てたどり着くラストでの感動はひとしお。

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