毎年のことではありますが、丸一年しっかり物語を構成してくれる「プリキュア」シリーズ。2015年2月から始まった「Go!プリンセスプリキュア」も、ついに最終回を迎えました。
最終話を視聴した多くの大人が「プリキュアロス」を感じると同時に、プリンセス達に涙したのはなぜなのか。
「強く、優しく、美しく」、そして「夢と希望」の物語でありながら、同じく「絶望」をも描き続けたこの作品の魅力とは?
夢を叶えるために必要なものはなにか
今回の敵「ディスダーク」が糧とするのは人の「絶望」。
大きくて純粋な夢を持つ者ほど深い絶望を生み出せるとして、1話からずっと描き続けていました。
夢を檻の中に「閉ざす」ことによって絶望を与えるディスダークですが、閉ざした夢も様々。セミの夢(セミ語のため解読不能)から絵本作家になる夢、トップアイドルになる夢など枚挙に暇がありませんが、閉ざされることによって容易に絶望へと至ります。
しかし何度も夢を檻に閉ざされながら、自ら絶望の耐性をつけたキャラクターがいます。
それはプリキュアに変身しない、本来なら脇キャラであるはずの七瀬ゆいちゃん。
絶望の檻に4回、絶望の額に1回、実に5回も絶望させられていますが、回数を追うごとに抵抗し、夢への決意を強めます。
最終的には絶望の檻を自らの力で脱出するという、プリキュアたちも声を上げて驚く偉業を成し遂げたこのキャラ。
夢を叶えるために真に必要なものは、「何度心折れ、絶望を味わっても再び夢に立ち向かえる心の強さと夢への思い」だと体現してくれました。
絶望を打ち倒すだけが夢への道ではない
この作品、驚くべきは敵キャラのほとんどが「敗北」「消滅」という最期を迎えなかったこと。
特に最初の敵として現れたクローズですが、一度敗北し消滅したかと思わせてのちに復活。
はるかをキュアフローラへと覚醒させた彼は、グランプリンセスとなったフローラとも一対一で戦いを挑みました。
それまでもはるかの夢を絶望へと導き、または閉じ込めようとしたクローズですが、その反面、はるかの夢に一番寄り添い、そして実質、一番の理解者でもあったかと思います。「絶望の化身」三人はそれぞれ、一人はあまりに強い夢への意識を前に諦めたように背を向け、一人は夢を探す人間達に寄り添い、一人はさらにそれを観察するという思い思いの距離を取りました。
けれど夢の傍に寄り添う絶望という図式は変わらず、そしてプリンセス達もそれを「そこにあるもの」として認めての最終回。
夢を追う時、傍には絶望がある。それを認識しながらも、なおまっすぐ歩んでいくのが夢への道だと描いていたように思います。
控えめに言って神回でした。涙枯れるかと思いました。
このアニメの凄いところは、一回限りの捨てキャラがいなかったところだと思います。すべてのキャラがきちんと役割を持ち、後々にまで影響を及ぼしました。
さっそく「魔法つかいプリキュア」の玩具展開が始まっていますが、最終回を過ぎた今だからこそ、是非全話見て頂きたい作品です。