定額制アニソン配信サービス「ANiUTa」
リリースから丸1年
「これからのアニソンとANiUTa」をテーマに
佐々木社長にお話を伺いました
2017年3月にリリースされた、アニメソング(以下、アニソン)の定額制配信サービス『ANiUTa(アニュータ)』。「違法アップロード問題」「CDレコード業界の持続可能性」「海外展開への需要急増」など、業界全体が揺れに揺れる今日、リリースから1年経ったANiUTaはどう展開していくのか。株式会社アニュータ・代表取締役社長を務める、佐々木史朗 氏にお話を伺いました。
ANiUTa・佐々木史朗社長インタビュー―リリースから1年
聞き手:編集部 ふくもと / 佐々木史朗 氏:佐々木
ANiUTaの1年目
―さて、2017年3月にリリースされた、アニソン定額制配信サービス(=「サブスクリプションサービス」以下、サブスクと表記)ANiUTa(アニュータ)。提供開始から一年が経ちましたが、いかがでしょうか。
佐々木:若い方への需要が非常に大きかったな、と感じました。日本以外の国は殆どサブスクに流れていっている中で、日本は人口比で言うとまだ、サブスクを利用している人が少ないな、とも思いましたね。サブスクリプションは、大別すると、いわゆる「ラジオ型」と「オンデマンド型」という2種類に分けられます。ANiUTaは「オンデマンド型」に分類されるのですが、アメリカなどでは数千万人ものユーザーがいる中で、日本は未だに300万~500万人というところでしょうか。
―なるほど。確かに海外では、日本よりも他のサブスクリプションサービスが普及しているといった印象を受けますね。
佐々木:はい。日本のマーケットは以前はドイツと非常に似ているところがあって、配信よりCDという傾向だったのですが、そのドイツでもここ数年で、かなりサブスクへ移行してきています。結果、日本だけ、いわゆるガラパゴス状態です。ただ、サブスク配信ではなくCDのシェアが高い、その日本でも、若い世代は残念ながらCDを持っていない人たちの方が圧倒的に多い。かつ、それはアニメソングも例外ではなかったんですね。
そこで、その若い世代のアニメファンやアニメソングが好きな方々の「遊び場」になり得るようなサービスを提供したいという想いもあって、アニソンのサブスクリプションサービス『ANiUTa』をリリースするに至りました。
―リリース当初の広報活動をはじめ、声優プレイリストの提供など、様々なサービスを展開なさってきたかと思いますが、この一年で「一番注力したこと」は何でしょうか?
佐々木:ANiUTa独自のコンテンツを持つこと。まず一つは、ANiUTaが開催するライブ「あにゅパ!!」です。会員限定先行申し込みのシステムや、ライブをもっと楽しんでいただくために、事前に出演アーティストのプレイリスト特集や、ライブ終了直後にはセットリストの公開なども行いました。
「アニソンをもっと楽しんでいただくこと」を念頭に、常に面白いことを展開していきたいな、と思い、ただアニソンを聴くだけに終わらない、様々な企画を提供させて頂きました。そうした「遊び」要素を作り込んでいくことに注力しましたね。
―そうしたサービスや工夫は、ユーザーに伝わっていると思われますか?
佐々木:はい。一年間サービスを続けていて一つ思ったのは、有料会員の退会率が異常に低いな、と。これはすなわち、ANiUTaというサービスを、アニメ,音楽が好きな方に評価していただいている証左かなと思っています。
「あにゅパ!!」などライブの先行チケットを購入するために有料会員になった方が、目的が達成されたチケット購入後も有料会員を辞めずに、継続してくださっているというパターンも多いのではないかな、と思われます。
アニソン市場と持続可能性
―まさに、アニメファンの需要に、ANiUTaというサービスが合致したからこそですね。
さて、アニメファンの需要、といった点から離れ「レーベル側の想い」という点についても伺わせていただきたいと思います。佐々木社長は以前、他誌のインタビューで「企業間で協力するサブスクリプションサービスを展開しなければ業界が萎縮してしまう。しかし、盤を販売するレーベルからすると、もちろんサブスクリプションサービスへの参加に一定の“怖さ”はある」と語っておられました。ANiUTaというサービスには、多くのアニソンレーベルが参画していますが、レーベル側の反応、とりわけ「サブスクへの恐怖感」といった点で変化はあったでしょうか。
佐々木:基本的にはやはり「サブスクリプションサービスに一定の“怖さ”はある」といった想いは変わっていないと思います。ただ、CDの売上というのはアニソンに限らず、レコード業界では年々落ちてきているわけで、それをダウンロード型やストリーミング型に転換する配信サービスは、アニソンに限らずどのジャンルでも行われてきていることですので、流れを見ると、相応の転換だったのかな、と思います。
―なるほど。レコード業界ではまさにそうしたの変革が起きており、ANiUTaの登場は、その変革の象徴といった感じですね。そうした「変革」といった点では、今日、楽曲や雑誌などの「違法アップロード問題」が注目を浴びていますが、これについてはどうお考えでしょうか。
佐々木:この問題については、立場によって考え方が違うかもしれませんが、アーチストや作家を守るという立場からしますとちゃんとお金が当事者に入ってくるようにしないといけないと思います。
―アニソンへの入り口を広げる、といった点で、ANiUTaは月額600円と安価でアニソンを楽しめますし、非常に効果があったわけですよね。
佐々木:全ジャンルの楽曲があるわけではないので、楽曲数から見ても妥当な値段ではあるのですが、それに加えて、世界でのサービス提供も視野に入れておりましたので、どこの国においても5ドルくらいのサービス、という値付けがいいのではと。
もちろん、私達から見ても、この価格設定はどうなんだろうか、と疑問に思うときもありましたし、参画レーベルさんからも「安い」という声が挙がったりなどもし、いろいろな意見がありましたが、それくらいのことをしないと…と思いまして。
―そこからCDを買うユーザーもいるでしょうしね。
佐々木:そうですね。アニメ業界を見ても、アニメ好きが減っているわけではないでしょうし、単にお金の使い方が変わってきた、ということなんですよね。現に、アーティストのライブへ行く人たちだってすごく増えてきています。
ですので、ANiUTaは、よりアニソンやアニメを好きになってもらえる「種まき」的な考え方で運営していけたら良いかなと思います。
ANiUTaはアニソン好きの「遊び場」になってほしい
©逢空万太・ソフトバンク クリエイティブ/名状しがたい製作委員会のようなものW
©けものフレンズプロジェクトA
©安部真弘(週刊少年チャンピオン)/海の家れもん
―十分“成長”したら、ANiUTaでガリガリと遊んでいただけますしね。
佐々木:はい。もちろん音楽を聴くというのが基本の楽しみ方だと思いますが、要はアニソン好きの方々の遊び場になってもらいたいという考えでいますので、「種まき」の更に先へ…と、常に新しいことをしていかなければいけないなと思っています。
アーティストの皆さんに選んでいただく、オフィシャルのプレイリストの提供はもちろん、ファンの方々それぞれにプレイリストを作っていただく機能もありますので、ぜひ体験していただきたいです。
―こういった「遊び」が思いつくのは、やはり実際にアニソンが大好きな方々が作ってらっしゃるからですよね。
佐々木:アニメに対する愛情を強く持っている人間が作っていますので、そこは単純に「楽曲のサブスクリプションサービスを展開します。その中にアニソンというジャンルを設けます。」としている他のサービスとは違うところですね。
そもそも、ANiUTaをリリースする当初から、アニメやアニソン好きな方々の痒いところに手が届くようなサービスを作りたいと思っていましたしね。
つまり、プレイリストやオリジナルコンテンツなどの配信は「こういう企画好きでしょ?分かる分かる!」と、実際にファンの立場でコンテンツを楽しんでいる人間が運営に携わっているからこそ提供できるもので、ANiUTaというのは、作ってる人間にも、使ってる人間にも「愛」があるからこそ成り立っているサービスなんだろうと思っています。
作ってる人間に関しては、四六時中アニメやアニメソングの事を考えている人間ですので(笑)
―社長のお話を伺っていたら、ますますこれからのANiUTaが楽しみになってきました。
佐々木:アーティストが所属している会社の連合ですから、やはり会社の垣根を超えてやっていけるサービスを展開していきたいと思っていますので、ぜひこれからも楽しみにしていただきたいです。
ANiUTaの海外展開
―さて、様々なインタビューで佐々木社長が語っていらっしゃるのは「ANiUTaプレゼンツのワールドライブツアーを開催したい」も挙げられるかと思います。現時点での、ANiUTa海外展開のビジョンはどういった感じなのでしょうか。
佐々木:リリースから1年の間で注力していたことの一つが「海外展開」でした。これまでも、様々な課題を一つ一つ解決しているような状況で、来年度中には世界で配信させたい、という目標のもとで現在取り組んでいます。
―昨年のANiUTaリリース時には、配信されていない海外でも注目が高かったようです。中でも、「アニメのタイトルで検索ができる」という機能が注目を集めていました。
佐々木:先程もお話したとおり、海外でもサブスクが既に幅広く展開されているわけですが、曲が多すぎると聴きたい曲が埋まってしまって、見つけづらいんですね。そうした点で、ANiUTaにはアニソンしかないので、アニソン好きの方には非常にピッタリなのかな、と。そこがANiUTaのメリットだと思いますし、海外ではすでに日本産アニメの配信サービスなどが非常に活発化しており、そうした前例を見ても、ANiUTaが海外へ展開していける可能性というのが非常にあるなと考えています。
―海外でのサービス提供で、他社と差別化し得るポイントとしては、やはり「タイトル検索」になるのでしょうか。
佐々木:そうですね。他のサブスクリプションサービスでは出来ないことですし、一気に広まってくれる可能性があるのではないかな、と思っています。更に、これもお話したことですが、出来ればライブとかをやっていきたいな、と。
―ANiUTaプレゼンツの、ですね。
佐々木:はい。そうしたためにも、まだ具体的な話は決まっていないのですが、日本語の歌詞をローマ字で出していくサービスも展開したいな、と思っています。
―日本語の歌詞を…ローマ字にですか!?
佐々木:私自身、アーティストを連れて海外のコンベンションなどでライブを行ったりするんですが、海外のファンの方々は、驚くべきことにそのアーティストの楽曲を日本語で歌えるんですよ。せっかくANiUTaプレゼンツのライブを海外で開催するなら、そういった「日本語で日本のアニソンを楽しみやすく」という取り組み、サービスも展開していきたいなと思っています。
―いつかは「世界のANiUTa」と呼ばれる、ワールドワイドなサービスになりそうですね。
佐々木:海外は、日本よりもサブスクへ非常に馴染みがあるでしょうし、ANiUTaはAppleやGoogleからダウンロードできる世界共通のアプリ形式で配信をしておりますので、そういった点では私も非常に期待しています。
―ぜひ、海外のアニメファンへコメントを頂戴してもよろしいでしょうか?
佐々木:ANiUTaは、海外でもほぼタイムラグがなく配信可能で、TVサイズの楽曲に関しては、日本でも放送が始まったとほぼ同時にお聴きいただけます。新曲も毎月毎月更新されていきますので、まさに日本のアニメソングを日本人と同じタイミングで楽しんでいただける、そんなサービスではないかな、と思っています。ライブの展開なども視野に入れ、海外の方々にも更に日本のアニソンを楽しんでいただける基盤づくりを進めておりますので、ぜひリリースを楽しみにしていただければと思います。
ANiUTa、2年目の挑戦
―1年目では、まずはサービス自体の広報などに注力されてきたかと思います。そのANiUTa、2年目の目標はございますか?
佐々木:まず一つ目は先程話題にあった「海外展開」。これは間違いなく力を入れていきます。そして今年も開催の「あにゅパ!」。加えて、ANiUTaオリジナルのコンテンツもより充実させていきたいと考えています。
―なるほど、そこで「ANiUTa」と他サービスの差別化、ということですね。
佐々木:はい。ANiUTaというサービスが、他社のサブスクと何が違うかと問われれば「ANiUTaは、アニメ映像や音楽を作っている会社の集合体である」という点ですよね。音楽を作って発売している企業が参画しているからこそ出来る企画もあるわけです。
例えば、ANiUTaでは昨年、Wake Up, May’n!という、May’nと Wake Up, Girls!がコラボした、ANiUTaオリジナル楽曲を配信しました。これは、非常にユーザーからの評価が高かったんです。
やはり2年目でも、引き続きこうしたオリジナルコンテンツの配信は続けていきたいですし、こういったANiUTaならではの、音源を作っていたり、映像を作っていたりするレーベルが参画しているからこそ、という企画をどんどん作って行きたいと思っています。まさにここが、ANiUTa以外のサブスクとの差別化し得るポイントになりますからね。
―オリジナルコンテンツは、一ファンからしてもとても楽しみです。
佐々木:更に拡充していきたいと思います。また、そうしたオリジナルコンテンツも評価が高いのですが、加えて、TVサイズの配信も評価が高いんです。
―90秒尺などの配信楽曲ですよね。
佐々木:はい。TVサイズの楽曲に関しては、出来るだけTVアニメが放送開始した直後のタイミングで公開するようにしていますので、最速で楽しんでいただけるのではないかな、と。これも、先程申し上げた、音楽や映像の権利を持っているANiUTaだからこそ出来るサービスですね。
―「ANiUTaだからこそ。」これからもぜひ追求していただきたいです。
アニメファンの皆さんへ
―是非最後に、読者の方々へコメントを頂戴できますでしょうか?
佐々木:まだANiUTa会員でない方はぜひ試しにダウンロードしていただき、楽しさを実感していただきたいです。
一ヶ月間の無料体験もありますし、無料会員のまま30秒間の試聴のみをお楽しみいただくこともできます。
特に、1月,4月,7月,10月などの放送クール代わりの時期は、放送が始まったTVアニメ作品の新曲の配信がすぐに行われますのでおすすめです。
また、これまで会員になってくださっている方々へは、基本となる「アニソンが聴ける」から更にいろいろな楽しみ方をそれぞれで見出していただき、ANiUTaの中をぐるぐると遊んで、ライフスタイルの一つとして取り入れていただければ嬉しいですね。
これからもANiUTaを楽しんでいただけるような企画や取り組みを進めてまいりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。
(取材・文=ふくもと)
アニソン専門定額配信サービス「ANiUTa(アニュータ)」
対応デバイス:スマートフォン
対応OS:Android / iOS
楽曲数:6万曲以上
価格:月額600円(税別)
※初回1ヶ月間無料:iOS版は翌月同日から、Android版は31日間が経過後に課金開始。1ユーザー1回限りの適用。
公式サイト:https://aniuta.co.jp/
※本記事が一時、誤植のまま掲載されておりましたこと、深くお詫び申し上げます。(編集部)
[kanren postid=”54667″]